KAWASE BIIKI

ポスト・トルコリラとしてのルーマニアレイ

トルコリラの急落から早2ヶ月が経過しました。下落幅が大きかったこともあり、一生忘れられない思い出になった方も多いのではないでしょうか。私はこの業界にながくいますが、やはりこういったダイナミックな動きは興奮を覚える物です。そしてこうした通貨の急落を見つけることこそが、為替長期投資の意義であり、醍醐味であると感じています。

 

 

 

ということで、次のトルコリラを探す意味を込めまして、今後急落する可能性が高い通貨を紹介したいと思います。

今回見つけてきたのは、東ヨーロッパ・ルーマニアの通貨レウ(RON・複数形はレイ。この先は複数形のレイで表記を統一)です。

 

ルーマニア自体の知名度はそこそこありますが、その通貨を取引している方はきわめて稀だと思います。それでも金融庁登録のFX業者のなかで取引できる業者が複数(ドルストレート・クロスユーロが中心)あり、十分に検討価値がある通貨だと思っています。

 

ルーマニアレイの下落予想の理由としましては、トルコリラとの相似点があります。

トルコリラが下落した原因は、

 

トルコ

・実力   100

・生活水準 150

 

と実力に比べ生活水準が大幅に高くなっていたためと言うことが出来ます。先日の下落はこのギャップが修正された動き(このギャップを対外債務で埋めていたが、債券市場の流動性が減少したため、強制的に修正された。)ということになります。

 

これをルーマニアに当てはめてみますと、

 

ルーマニア

・実力    80

・生活水準 110

 

位のイメージで良いと思います。実力と生活水準のギャップはトルコほどではないですが、実力以上の生活をしているという点では同様の構図です。そしてルーマニアの問題点はこの先にあります。

実は、ルーマニアは、この状況にもかかわらず、最低賃金を大幅に引き上げているのです。2016年1月に230ユーロ程度だった最低賃金は、現在400ユーロを超えていて、2年半で1.7倍以上になっています。さらに、来年1月には7.9%の上昇が決まっています。この間に、生産性(実力)も向上しているため、すべてが悪い上昇というわけではないのですが、上昇幅が大きすぎることが問題になりそうです。つまり、実力の上昇幅よりも生活水準が改善幅が大きいため、実力と生活水準のギャップが広がってしまうということになります。

 

このような動きにより、経済指標が悪化しています。対外債務が増加、貿易収支・経常収支が悪化・インフレ率が上昇中と為替にとっての悪材料が並びます。これらの値には足下の賃金上昇は織り込まれてはいないと考えられ、今後ももう一段の悪化がが予想されます。

ルーマニアはリーマンショックが起こった2008年に経常収支が対GDP比−11.8%という、考えられないほど悪かった時期があり、通貨が35%程下落(対ユーロ)したという実績があります。今回は経済収支がそこまで悪化するとは考えていませんが、ユーロが割安水準を維持していることもあり、ユーロが急上昇した場合などに、大幅に下落する可能性は高いと思っています。

 

 

 

ルーマニアの経済指標は悪化していますが、まだ、トルコほどではなく、多少の余裕があるように見えます。また、かなりマイナーな通貨と言うこともあり、投機的な動きで大きく売られることもないと考えています。そうなりますと、実際に下落するのは、来年か再来年、はたまたもっと先という相当長期な話になりそうです。

今回紹介したルーマニアレイの他にも、大幅な下落が予想される通貨はあると思われます。今後も、機会がありましたら紹介していきたいと考えています。

 

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ニュージーランドドルの取捨選択

為替市場はややリスクオフの展開となっています。特に材料がない中で日本円が弱めの全面高といったところでしょうか。昨日の新興国通貨の下落のようなこともあり、気の抜けない状況です。

そんな中、オセアニア通貨が弱い動きになっています。特に、ニュージーランドドルは中長期的に下値を切り下げる動きで、今後の動きが注目されます。

 

 

ニュージーランドドルがなぜ下落しているのかと言いますと、アメリカFRBのバランスシート縮小をはじめとする、主要国の金融政策の緊縮化があります。ニュージーランドは債務水準が高く、対外債務比率が多いため、債券市場が緊縮化するような環境では為替が下落しやすくなります。また経常収支の赤字幅も大きくなっていて、輸出産業で稼ぐことが出来ていないのも悪材料です。

 

高い対外債務水準と大幅な経常赤字といいますと、トルコを思い出す方もいるかと思いますが、ニュージーランドの水準はトルコほどは悪くありません。また、債務の多くは民間債務のため、国債格付けが高く、低インフレ・自国通貨建てということもあり、一気に資金が抜けることはないかと思われます。

 

それでは、今後のニュージーランドドルの値動きがどうなるのかと言いますと、私は下落すると予想しています。

理由はいくつかあるのですが、ひとつはアメリカの短期・長期金利の上昇です。ニュージーランドはキャリートレードやイールドハンティングといった金利を狙う投資家の投資対象です。世界的な低金利の中では、高国債格付けを持つニュージーランドの金利は需要が高かったのですが、このところのアメリカの利上げが続く中で、ニュージーランドの1.75%という政策金利は魅力が薄れていくと考えられます。

二つ目の理由は、原油価格の上昇です。ニュージーランドは、原油の輸入割合が高い国の一つで、原油価格の上昇は為替にとっては、マイナス材料になります。このところの原油高は確実に貿易収支・経常収支の悪化を招くと思われます。

さらに、中国経済もニュージーランドドルに影響を与える可能性がありそうです。ニュージーランドは、中国との直接の貿易額が大きい他、隣国オーストラリアを通じて、経済で深い関係を持っています。中国の経常収支の黒字幅が縮小する中で、特に貿易面でどのような変化を見せるのか注意していきたいところです。

 

このように悪材料が並んでいるのですが、実際にニュージーランドドルを取引する際には、上昇する可能性もあります。実は、投機筋のIMM通貨先物のニュージーランドドルのポジションは、過去最高水準の売り越しとなっています。つまり、ニュージーランドドルはすでに売られていることになります。ニュージーランドドルはこのIMMポジションとの関連はそれ程高いものではないのですが、結構大きめな量で、売りポジションが積み上がっているため、この巻き戻しは常に警戒する必要はありそうです。

 

 

 

各国の金融政策が動く中で、債券市場の動きや金利が、為替の動きを予想する上での重要度を増しています。こういった物は短期ではなく、より長い期間の値動きに影響を与えるため、目先の動きとらわれず、じっくりと幅広く、見定めていくことが、ただしい予想をする鍵となりそうです。ニュージーランドドルだけではなく、新興国通貨を予想する場合にも、主要国の金融政策は影響が大きいため、常に情報収集を怠らないようにしたいものです。

 

| コラム | 14:22 | comments(0) | trackbacks(0) |

2018年8月10日のトルコリラ下落を考察する

8月10日にトルコリラが大きく下落しました。

この理由を考察します。

 

今回の下落に関しては、

問1 「なぜ、トルコリラは下落しているのか。」

問2 「なぜ、2018年はトルコリラの下落幅が大きいのか。」

問3 「なぜ、2018年8月10日にトルコリラが大きく下落したのか。」

の三つに分けて解説していきます。

 

本題に入る前に「通貨と物価」の関係についておさらいしておきます。

「通貨は、物価が上昇すると下落し、逆に物価が下落すると、通貨が上昇する」という関係があります。これは、(需給が変化せず)物価が2倍になった場合に、通貨側から見た場合、通貨の価値が半分になっていると考えれば分かり易いと思います。

 

このように通貨は、自然と価値が変動してしまうため、その価値を保存することが困難になります。そのため、物価変動分の利息を付与することによって通貨の価値の保持を可能にしています。つまり、インフレ率10%の通貨に10%の利息を付与することで価値を保存させるということです。これは、「インフレにより通貨そのものの価値が10%下落するけれど、利息を10%付与することで、その穴埋めをしてくれますよ。」という意味です。

 

このような仕組みが備わっているため、為替取引という視点で見た場合では、

「高金利通貨も低金利通貨も存在せず、全ての通貨は損得のない対等な関係である」

ということになります。これは為替の基本のひとつになります。

 

超長期(数十年)単位でトルコリラの下落が続いているというのは、トルコは長年にわたりインフレ率が高い状態が続いているからです。ただし、このところのトルコリラは、このインフレ率を調整したレートで見た場合でも、価格の下落が続いています。これは、為替に物価以外の価格変動要因が関わっているためです。今回はその辺りを解説していきたいと思います。

 

 

 

それでは本題に入ります。

まず、一般的な資金の流れを単純化して、貿易と投資の2種類とし、以下のように分けます。

 

★貿易

・入ってくる資金   嵳⊇弌

・出ていく資金   ◆嵳入」

 

★投資

・入ってくる資金  「海外からの投資」

・出ていく資金   ぁ岾こ阿悗諒嶌僉

 

トルコの場合、貿易赤字国のため、 嵳⊇弌弑盂曚茲蠅癲↓◆嵳入」金額の方が大きく、その貿易赤字を穴埋めしてきたのが、「海外からの投資」になっています。この海外からの投資は、トルコ国債や企業の社債、為替市場(FX)からの流入などがあります。

「海外からの投資」は基本的には債務のため、いつかは返さなければならないお金です。現状ではこの債務が増え、「入ってくる資金」と「出ていく資金」がつり合っているため、実質的にはトルコに資金が入っていない状態になっています。(2009年頃から投資資金は飽和していると推測されます)

 

トルコの貿易を見ていきます。

トルコは輸出産業は、自動車・自動車部品・機械機器・貴金属・衣料品・鉄鋼・食品などで、輸出先はEU圏内が5割を占めます。

また、サービス業として、観光による外貨獲得の割合が高いのが特徴になっています。

 

輸出量は伸びているのですが、伸び悩んでいます。

その理由としましては、

1.トルコ国内での人件費の高騰。

2.ECBの量的緩和に伴うユーロ安。

3.ハンガリー・チェコ・スロバキアといった東ヨーロッパ圏の国々との価格競争の激化。

4.2014年頃からの、テロやクーデター未遂による治安イメージ悪化からの観光収入の大幅減少。

等があります。

 

一方の輸入品は、機械機器・鉱物燃料・電気機器・自動車・自動車部品・鉄鋼・プラスチック製品などとなっています。

こちらは増加しています。

輸入が増加した背景には、

1.人口の増加(特に若い消費者の人口)。

2.エネルギー資源価格の高騰。

3.政府の経済政策による消費の活性化。

等が考えられます。

 

特に「3」については、GDP成長率がプラスに働くため、為替の上昇を連想させますが、実際には輸入が増加するため、為替を下落させる効果があります。「経済が成長することは、為替にとって上昇材料ではない。」ということは覚えておく必要があるでしょう。

 

トルコの貿易で興味深いのは、輸出は(米国ドルベースでも)増加しているにも関わらず、輸入がより速く増加したため、貿易赤字が増加しているという点です。

この辺りについては、トルコの国内政治にも関わるため難しいのですが、ちょっと「国民に贅沢させすぎてしまったな」位のイメージで良いと思います。

 

つまりトルコは、 嵳⊇弌廚伸び悩み、◆嵳入」が増加、「海外からの投資」はすでに飽和状態で、利払いの増加からぁ岾こ阿悗諒嶌僉廚増加している、という全方位で通貨が下落しやすい状態であったということです。特にトルコの場合は、貿易の赤字幅がかなり大きく、海外からの投資資金で賄いきれなくなるのは明らかでした。トルコリラの下落は必然と言うことになります。

 

ここまでが、問1 の「なぜトルコリラは下落しているのか。」の答えになります。

 

 

 

それでは、問2 「なぜ2018年はトルコリラの下落幅が大きいのか。」ですが、

これは、主要国中央銀行の金融政策が緊縮化したことによって、金融市場に入ってくる資金が減少しているためとなります。

 

2017以降の主要国中央銀行の金融政策を見てみますと、

 

・米国FRB 政策金利の引き上げ6回(計1.5%)

       バランスシートの縮小(3ヶ月ごとに縮小幅を拡大)

・欧州ECB 債券の買い入れ額の縮小      

・日本日銀  債券の買い入れ額の縮小

       長期金利目標の柔軟化

 

と金融政策が緊縮化しています。

リーマンショック以降、主要国の中央銀行は金融政策を緩和的にし、金融市場に資金を供給してきましたが、この供給量が減少したり、引き揚げられているといった格好です。米国FRBのバランスシート縮小だけをみても、現在までに2000億米国ドル(22兆円)以上の資金が金融市場から引き揚げられていて、影響は大きくなっています。

 

金融市場に流入する資金が減少するため、当然金融商品の価格は下落しやすくなります。

特にこういった状態では、信用力の低い金融商品から順に、買い手がいなくなるため、トルコへの投資、トルコ側から見た場合の「海外からの投資」が大きく減少することとなりました。トルコリラはこの動きを受け、下げ幅を広げることとなりました。

アルゼンチン国債や仮想通貨が、昨年後半辺りからさえない動きになっているのも、同じ理由になります。

 

 

 

そして、問3 「なぜ2018年8月10日にトルコリラが大きく下落したのか。」といいますと、

これは、

・日本のお盆休み前で、欧州のバカンスシーズンで流動性が乏しかった。

・欧州金融機関におけるトルコへの融資の問題のニュースが流れた。

・米国の経済制裁。

と悪い条件が重なったためです。

 

ただ、実際のニュースは何でも良かったのだと思います。今まで解説してきたような理由のため、トルコリラは大きな下落を必要としていました、理由はいくらでも付けられたのです。現実では流動性が低くなるタイミングで下落するという、自然な動きになったということになります。

 

 

 

このように、トルコリラが下落した要因は複合的なものでした。一番影響が大きかったのは、主要国の金融政策の変更だと思われますが、本質はトルコの産業の弱さであり、海外からの資金に依存した経済システムが限界を迎えたのだと思われます。

貿易の強さが確立していない新興国通貨が、主要国の金融政策の緊縮化から下落するというのは、1990年代にアジア通貨危機がありますが、今回も同様のケースとみています。海外からの資金に依存した新興工業国が陥りやすい罠に、トルコも見事に嵌ってしまったのだと思われます。

 

今後のトルコリラの動きになりますが、今回急激な動きを見せたため、しばらくは不安定な動きが続くのではないかと思われます。しかし、そういった動きは意味のあるものではありません。

トルコリラにはまだ割高感が残っており、さらに主要国の金融政策の緊縮化はこれからも加速するため、中期的に下落すると予想します。トルコの輸出競争力の回復には、もう一段階・二段階の人件費の下落が必要になります。トルコリラが安定した動きを見せるのは少し先の話になりそうです。

 

 

 

その他の通貨の最新予想は→→ 「為替予想2018年後半」

 

ご意見ご感想質問等を、コメント欄またはtwitterでお待ちしております。是非ご利用ください。

 

 

| コラム | 09:18 | comments(0) | trackbacks(0) |

2018年上半期まとめと下半期の見通し

まずは上半期のおさらいから。

 

年初の為替市場は、米国ドル安・ユーロ高で始まりました。2月中旬まではこの動きが続き、その後値動きが縮小、レンジ相場になります。レンジ相場は2ヶ月ほど続いたのですが、4月に入り急に動きが出てきます。米国ドルが上昇、ユーロと新興国通貨が急な下落とないります。結局、上半期全体を見ますと、米国ドル高・ヨーロッパ通貨・新興国資源国通貨安で終了しそうな感じです。

米国ドルは上下に動いたため、値幅はあったのですが、現在の米国ドルの水準は昨年末と比べ、2〜3%程度高とそれ程大きな動きにはなっていません。主要国通貨では日本円が3月まで上昇も、その後下落。イギリスポンドは4月頃まで堅調も、その後下落と、4月頃を境目に「往って来い」の動きになっています。

より大きく動いたのは、新興国通貨で、トルコリラ・メキシコペソ等、個人投資家に人気の通貨で、大幅な下落が見られました。直近では南アフリカランドも下落基調を示しています。

また、原油価格が昨年後半から大幅に上昇していますが、産油国通貨はロシアルーブル・ノルウェークローネ・カナダドル・メキシコペソと対米国ドルで全ての通貨が値下がりとなりました。こちらはやや意外な感じがします。

 

上半期の為替市場がこのような動きになった要因は大きく2つです。米国FRBのバランスシート縮小に伴う、米国長期債の金利上昇。そして昨年後半から積み上がっていた、ユーロの投機筋ロングポジション(米国ドルのショートポジション)の解消です。

特に、ERBのバランスシートの縮小は徐々に加速していて、これが新興国通貨に与えた影響は相当大きかったと考えられます。

 

この半年の相場は、後から考察する分には分かり易い相場だったのですが、実際の値動きを見ている時には、理解しづらい動きも多く、面倒くさい相場環境だと思えていました。主要国通貨間の値幅がそれ程大きくなく、どの通貨をベースで考えれば良いのか、常に迷わされる値動きでありました。一番シンプルな動きだったのは、新興国通貨の下落で、この動きを狙うというのが正解であったと思われます。個人的にはユーロの上昇予想をしていたので、これが大きく外れた時点で、様子見を決め込むという状況となっていました。

 

 

下半期の予想ですが、こちらも難解です。

基本的には、上半期の相場と同様、新興国通貨の下落を狙うのが一番確実性が高いと予想します。

 

年後半のスケジュールで、為替市場への影響が大きそうなものが、7月のFRBのバランスシート縮小の加速(資産売却の拡大)と、9月のECBの量的緩和の縮小です。ここにさらに、FRBは2回の利上げが想定されることから、市場全体が緊縮的な動きになることが想定されます。

 

そうなりますと、やはり厳しいのは新興国資源国通貨です。ファンダメンタルズが良くない、トルコリラ・ニュージーランドドル辺りを中心に下落が予想されます。

主要国通貨では、日本円が手堅い動きになりそうですが、決め手に欠けます。相場の中心をになってほしい米国ドルは、ここから上抜ける力は小さいのですが、下落する理由も無いため、なんともいえない動きになりそうです。

 

世界経済が堅調なため、急な全面リスクオフのような動きにはならないと思われます。それでも、個別に新興国・資源国通貨で大きな下落になるもの出てくるのではないでしょうか。株式市場や債券市場を見ながら、世界全体の動きをじっくりと観察していたいところです。

ここからの為替相場は、経常赤字の国の通貨は絶対ダメ、(国債格付けが低いような)新興国の通貨は絶対ダメという、ある意味分かり易いといえば、分かり易い相場になると思われます。主要国通貨感の値動きは小さいかもしれないため、新興国通貨市場が主戦場になりそうです。

 

 

 

明日から、個別通貨の予想をしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

| コラム | 06:10 | comments(0) | trackbacks(0) |

マンスリー為替レポート2018・5

マンスリーって付けましたが、たぶん不定期。

 

為替市場は、米国ドル独歩高、新興国通貨安が続いています。米国ドルインデックス(ドル指数・DXY)は、93.8と昨年12月以来の高値、米国ドルは年初から2月上旬までは、下落基調でしたが、この動きをすべて戻したことになります。下落が大きな通貨は、メキシコペソやトルコリラ・ロシアルーブルなど、個別に事情はありそうですが、総じて信用力が低い国の通貨が大きく売られています。ただ、ユーロやオセアニア通貨・日本円も対ドルでは下落していて、米国ドル独歩高の動きであるのは間違いありません。

このような動きは、米国長期債の金利上昇を受けてのものと考えられますが、根本的には、米国FRBのバランスシート縮小の影響とみています。

 

 

米国FRBは昨年2017年10月からバランスシートの縮小に着手しています。当初は月100億ドルでしたが、3ヶ月ごとに縮小幅を広げ、現在は月300億ドルペースで縮小を行っています。月300億ドルというのは、金融市場の規模からすればそれ程大きくは見えませんが、一方的な売却になるため、その影響はイメージよりも大きくなります。

このバランスシート縮小には金融市場から資金を奪う効果があります。FRBが大量の有価証券を売却するため、売却された金額分だけのその他の商品が、市場では買われず、値を落とす必要が出てくるということです。

今回、これの影響を直接受けたのが、米国の長期債であり、長期債が値下がり(金利が上昇)したことで影響を受けたのが、新興国債券や低格付け債券だったのだと思われます。また、米国株式市場にも一定の影響を与えたと考えられます。

バランスシートの縮小は、7月からは月400億ドル、10月からは月500億ドルのペースと加速するため、米国長期金利上昇からの、米国ドル独歩高の展開は長く続く可能性がありそうです。

 

 

もうひとつ、為替市場に大きな影響を与えそうなのが原油価格の動向です。原油価格はWTIが昨年6月に1バレル=45ドルを割り込んでいましたが、その後急上昇して、足下で、1バレル=71ドル台で推移しています。また北海ブレント原油は、先週一時1バレル=80ドルの大台を突破しました。

需給の逼迫に加え、投機筋の買いが増加したことが、原油価格上昇の理由になりますが、今年3月後半辺りからは、投機的な買いは減少していて、実需層が値段を形成している格好になります。この価格帯になりますと、米国シェールオイルの増産が加速するという見方もありましたが、現在のところ増産幅は少ないものなっていて、需要の増加に追いついていません。需給はさらにタイトになる可能性はあります。もちろん、足下の動きには、シリア情勢やイランの核合意の問題などといった地政学的な影響も否定はできません。

 

原油価格の為替に与える影響ですが、好影響側で大きいのはロシアルーブル・ノルウェークローネ・カナダドルまで。ロシアは為替が下落していることもあり、経常収支が過去最高になる可能性もあります。悪影響側では、日本円・中国元・ユーロといった主要国通貨の他、ニュージーランドドルやポーランドズロチ・南アフリカランドまで幅広く影響がありそうです。

特に、上記のバランスシート縮小の影響を受けそうな通貨で、原油価格の上昇でも悪影響を受けそうな通貨は、かなり厳しいものになると考えられます。現在のところ、原油価格の上昇の影響は、まだ為替には織り込まれてなく、これからの動きに注意が必要になります。

 

 

 

正直、昨年FRBがバランスシート縮小を開始した段階で、現在のように為替に影響を与えるとは想像できませんでした。米国ドル自身の動きが、かなり想定と違っていて、相場を見誤りやりました。

ここからは、バランスシート縮小がさらに加速させるということも、気にしなければならないでしょうし、ECBが、量的緩和を縮小させると言うことも、考慮する必要が出てきそうです。相場が不安定化する恐れもあります。

そのような状況の中で一番確実なのは、新興国通貨が下落するということでしょうから、ここら辺を中心に、ポートフォリオを作成するというのが、リスクの少ない行動になるのではないでしょうか。

 

 

| コラム | 11:19 | comments(1) | trackbacks(0) |

買いたい通貨・売りたい通貨2018年3月

【為替予想2018年 3月〜】

 

★強い   ・ユーロ

 

★やや強い ・日本円(▼)          ・ロシアルーブル        ・ポーランドズロチ

 

★中立   ・オーストラリアドル(▼)   ・中国人民元(△)       ・南アフリカランド

     ・ブラジルレアル

     

★やや弱い ・イギリスポンド  (▼)                ・ノルウェークローネ(△)   ・アメリカドル

      ・メキシコペソ         

 

★弱い   ・ニュージーランドドル     ・トルコリラ          ・カナダドル(▼)

 

 

・強い    今後半年〜1年で、実質実効為替レートが  +15% 〜

・やや強い  今後半年〜1年で、実質実効為替レートが  +5% 〜 +15%

・中立    今後半年〜1年で、実質実効為替レートが  - 5% 〜 +5%

・やや弱い  今後半年〜1年で、実質実効為替レートが  - 5% 〜 -15%

・弱い    今後半年〜1年で、実質実効為替レートが  -15% 〜

  

(△)は、昨年末の予想と比べ、予想を改善させた通貨。

(▼)は、昨年末の予想に比べ、予想を悪化させた通貨。

 

日本円の予想変更ですが、これはここまで日本円が上昇してきたことを反映した結果で、日本円のファンダメンタルズが為替の上昇以外の部分で悪化したわけではありません。その他の通貨の予想は直近の経済指標などを考慮しています。オーストラリアやカナダはなにか良くない雰囲気が出てきています。

 

 

2018年の為替市場は昨年までと打って変わって、ボラティリティが出てやや忙しい展開です。1月はユーロが上昇し米国ドルが下落、2月以降は日本円が上昇し、新興国・資源国通貨が大きく売られました。2月以降米国ドルの動きが鈍くなっていて、日本円が為替市場全体を主導した動きになっています。

2月の米国株の下落から、金融市場全体がややリスクオフムードになり、直近の米国の貿易関税の話題からそのリスクオフが強まったといった印象です。FRBのバランスシート縮小を相まって、新興国通貨には厳しい相場環境となっています。キャリートレードの巻き戻しが起こっているといっても良いと思います。

 

今後の予想ですが、全体としては現在のリスクオフの相場環境が続くと予想します。米国の株価の影響とFRBのバランスシート縮小の影響が大きく、金融資産を縮小する動き、新興国から資金を引き揚げる動きはしばらく継続することになりそうです。

そのため為替市場では、日本円高、新興国通貨安が基本的な予想となります。その中で、割安感が強いユーロと、今回の問題の震源地である米国の通貨ドルが、いつ動き出すのかがポイントになりそうです。この米国ドルが大きく下落するようですと、市場全体の動きが大きくなり、ユーロは当然大きく上昇することになるでしょうが、新興国通貨も、上昇する可能性が出てきそうです。

注目は世界各国の金利状況です。米国が粛々と利上げを続ける中、その他の国の中央銀行がどのように動くのか、特に、民間・個人の債務額が大きくなっているカナダやオーストラリアの動向が気になるところです。さらに、好調なユーロ圏経済の中で、ECBの量的緩和縮小・利上げの話題も注目を浴びる機会が増えることになりそうです。

 

 

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実質実効為替レートの回帰性に関するよくある勘違い

実質実効為替レートの回帰性についての話です。

 

実質実効為替レートとは、通貨ペアではなく、各通貨それぞれの強さを表す「実効レート」と、通貨の変動に影響する物価の変動を考慮した為替レートである「実質レート」を組み合わせたもので、各通貨の本質的な強さを直接表す値になります。

FXでは、実質実効為替レートは、「(実質金利が0の場合の)スワップポイントを加味した、為替の値動き」を表すため、この数値が上昇した通貨の買いポジションを持っていれば利益がでて、この数値が下落した通貨の買いポジションを持っていた場合は、損失を被るということになります。

 

 

この実質実効為替レートには、「一方向に動いた場合に、元の値に戻ろうとする性質(回帰性)」が備わっているのですが、理論上平均回帰ではない(元に戻ろうとするのだけれど、平均値に近づくわけではない)という大変厄介な性質になっていて、そのため取り扱いには非常に神経を使う必要があります。この「実質実効為替レートの回帰性」については著名な為替アナリストでも平均回帰すると勘違いしている場合が多々見られ、「実質実効為替レートが長期平均から大きく乖離しているため、元に戻ると予想します。」など間違った解説される場合があり注意が必要となっています

 

 

それでは、実質実効為替レートがどのように動いているのか見ていきます。

 

一般に通貨が変動する要因としては、

1 需給の変化(実貿易を除く、通貨の需給・主に投資資金)

2 貿易の強さの変化(実貿易)

3 物価の変化

 

の三つがありますが、このうち「3物価の変化」は実質実効為替レートにすでに織り込まれているため、実質実効為替レートの変動要因としましては、「1 需給の変化」「2 貿易の強さの変化」の二つになります。

 

「1需給の変化」とは、例えば投資家が、その国の金融資産(株式・債券・為替)を買ったり、売ったりすることです。これは買われる時期と、売られる時期があるため、周期的に変化します。つまり、これが実質実効為替レートの回帰性の要因になるものです。この働きだけを考えますと、(金融資産の売り買いは合計すると0になるため)実質実効為替レートは平均回帰をすることになります。

それでは、なぜ実質実効為替レートが平均回帰しないかといいますと、それは「2貿易の強さの変化」が実質実効レートに影響を与えるためです。

「2貿易の強さの変化」は、その国の貿易の強さがどう変わったかを示しているのですが、こちらは回帰性を持ちません。貿易の強さが変化、産業が進化し、貿易力が強化された場合は、実質実効為替レートは上昇することになり、産業が弱体化した場合は、実質実効為替レートは下落することになります。

つまり、為替の変化が「1需給の変化」によってなされた場合は、回帰性が働くため、為替は元に戻ろうとするのですが、為替の変化が「2貿易の強さの変化」によってなされた場合は、回帰性は働かず、通貨は元に戻らないということになるのです。

 

実質実効レートの動きの多くは「1需給の変化」が主な要因ですが、資源国通貨などでは、資源価格の急変動により「2貿易の強さの変化」が為替を動かす場合が見られます。また長期で為替を見た場合では、「1需給の変化」は循環するため「0」と考えられ、「2貿易の強さの変化」が累積して為替レートに影響を与えることになります。

 

実際の実質実効為替レートで見ていきますと、例えば、中国人民元の実質実効為替レートは、2006年頃から上昇し、現在の値は、1994年からの平均値と比べ20%以上高い水準ですが、貿易収支・経常収支共に黒字で、現行の中国人民元の値は割高ではありません。これは、この期間に中国の産業が急激に発展し、「貿易の強さ」が強化されたためと考えられます。

逆にトルコリラでは、現在の実質実効為替レートは、1994年からの平均値と比較し5%以上下落した値ですが、これはトルコリラが割安であることを示していません。貿易収支・経常収支共に大幅な赤字で、トルコリラの現行水準は、かなりの割高であると考えられます。特にここ数年は、実質実効レートが大幅に下落している(トルコリラを買いポジションで保有していると損失を被る)状態ですが、貿易指標の赤字幅が拡大していて、この期間に「貿易の強さ」が、大幅に悪化していると推測することができます。

 

 

 

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