KAWASE BIIKI

イギリスポンドを万年弱気予想する理由

円高が続く為替市場ですが、リスクオフというよりは、夏休み前のポジション調整の雰囲気があります。動きが無いわけではないですが、本格的な動きは、もう少し先のような気がします。ニュージーランドドルの動きが弱くなってきたのが気がかりでしょうか。

 

 

イギリスポンドについてなのですが、この記事を書こうと思い、自分で書いた過去の記事を読み返してみました。過去2年ほど、ポンドについては弱気予想を続けていて、イギリス経済についての文句ばかりを書いていました。実際にポンドは下落していますし、これからもポンドが強くなる材料が見当たりません。日本人が言えた筋合いは無いですが、大英帝国は長期の凋落モードに入ったようです。

 

イギリスの景気は悪くないのです。失業率は過去30年で最低水準で、完全雇用に近い水準です。しかし、何がイギリスの景気を支えているのかといいますと、為替安で恩恵を受ける輸出産業では無く、海外からの投資資金になります。

債券(国債・社債)・株式・不動産それぞれに市場に投資資金が大量に流れ込んできていて、この値上がりが、個人の所得を増大させ、消費を促している構造です。しかし、ポンドが下落していることからも分かりますように、この流入資金以上の額が、イギリスの貿易損失と、金利・配当金の支払いのため、海外に流出していることになります。イギリスの経常赤字の水準はかなり酷い値が続いています。(これでも為替が下落したことで、最悪期は脱してはいます。)イギリスの輸出産業は完全に稼ぐ力を失いつつあります。

ちなみに、ここ1年は海外からの直接投資が伸びています。EU離脱が決定したこのタイミングで、イギリスに海外企業が新規進出する案件はそれ程多くないでしょうから、イギリス企業が海外企業や投資家に売られているのだと思われます。ARM社が、ソフトバンクグループに買収されたのも記憶に新しい話です。

 

ご存じの通り、イギリスは産油国になります。しかし、産出量はそれ程多くないため、輸入・輸出が均衡し、ちょっとだけ純輸出国といったところです。そのため、ここ数年のエネルギー資源価格の上下の動きの影響は少なかったと思われます。また、イギリスにもシェールエネルギー資源があるようですが、環境問題の影響もあり、開発は遅れています。このシェール産業は、開発が始まれば、イギリスの主要産業に一つになるかもしれません。

イギリスの足下での懸案事項は、やはりEU離脱にともなう企業の移転です。EUが(当然ですが)マーケットへの今まで通りの

参加を認めないようなので、主力の金融や製造業企業はヨーロッパ大陸本土への移転が進みそうです。現在のところは静かな動きですが、動き始めましたら、想定よりも大きな動きになるのでは無いかとみています。

 

 

昨年のEU離脱投票前後でイギリスポンドは大きく売られました。そのため、水準感としてはかなり調整が進んだように思われました。しかし、いろいろな数値を確かめてみると、ポンドにはまだまだまだ下落が必要なようです。ここから3割から4割程度の下落で、ようやくちょうど良い水準と入れるかもしれません。イギリスへの投資は活発なため、調整には時間が掛かりそうです。

 

 

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