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中国人民元と金融緩和

為替市場は米国ドルが強い状態が続いています。この水準ですとさすがに割高感は否めませんが、米国への資金の流れが続いていることもあり、下落の気配は感じません。一方のユーロは下落傾向を見せ、割安感が一層強まってきています。

そういった環境の中、日々注目を集めているのが中国人民元になります。足下の水準は妥当性のある水準と思われますが、先行きに関しましては、やや不安な面が増えてきました。

 

 

中国経済は、GDP成長率が年6%台と、拡大を維持していますが、拡大幅は減少傾向を示しています。特に貿易面ではそうした傾向が顕著に現れていて、貿易収支は黒字を維持していますが年々悪化、直近の数値は2015年と比較すると半分ぐらいの黒字幅となっています。それに伴い経常収支も悪化、2018年1Qには経常赤字に陥るなど、中国の貿易環境は数年前から一変しています。

要因としましては、経済成長による消費の拡大(輸入の増加)、人件費高騰による競争力の低下、資源価格の高騰などが挙げられます。足下で原油価格が下落しているため、一旦の回復は見込めるのですが、中期的には消費のさらなる拡大が予想されるため、貿易黒字の維持も苦しくなると思われます。また、ここにきて米中関係の悪化が浮上し、中国製品の輸入禁止や大規模な関税は、当然中国の輸出を減少させるため、さらなる貿易指標の悪化が懸念されています。

 

こういった経済状況を受け、中国政府および、中央銀行は、金融緩和を進めています。銀行の預金準備率の引き下げや、貸出金利の規制を行い、さらには企業債務の直接買い入れや、政策金利の引き下げも検討中のようです。金融緩和の目的としては、一般的には「債務の増加に苦しむ企業の救済」となります。これは、足下の経済や雇用を支えることには効果があるのですが、不良債権を抱えるいわゆる「ゾンビ企業」の生き残りを認めてしまうため、長期的には成長を阻害する効果があります。例えば、中国には技術を持った企業は沢山あるのですが、そういった企業に優秀な人材が集まりにくくなることが考えられます。

 

さらに、こういった金融緩和にはもう一つ懸念があります。それは通貨人民元への影響です。金融緩和が進むことで、通貨の流通量が増えることが予想され、これは人民元にとっては下落材料になります。名目の値で下落するため、1米国ドル=7人民元という水準を保ちたい中国政府にとっては頭の痛い問題です。

 

このように中国政府は、金融緩和を進めたいのだけれど、為替水準は維持したいというジレンマを抱えることとなっています。普通に考えれば、面子を忘れ為替水準を切り下げれば良いのですが、これが中国政府としてなかなか受け入れがたいことのようです。当然、米国やトランプ大統領との関係もありそうです。

 

しかし実際に為替水準の維持が可能かと言いますと、これは相当に厳しいと考えられます。外貨準備高がそれ程潤沢ではなく、2015年の為替水準維持が失敗したことを踏まえましても、ここから先に大規模な為替介入を行うことは難しいと思われます。またた海外への資金逃避は現状抑えられていますが、もし政策金利が低下するようですと、逃避の動きはふたたび活発化するでしょう。さらにすでに書いてきたように、貿易の改善は見込めないため、そう考えますと、長期での人民元の価格維持は、ほぼ不可能と言って良いのではないでしょうか。

 

 

中国人民元の水準は足下では決して割高ではありません。しかし、長期で見た場合にこれほど不安材料のある通貨も珍しいものです。いつ下落が始まるかの予想は難しいですが、来年辺り、金融緩和が強まった段階で下落が始まる可能性もあり、日々の動きには細心の注意を払いたいものであります。

 

| コラム | 07:02 | comments(0) | trackbacks(0) |
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