金融市場は生贄を必要としている
2018年も残り1ヶ月となりました。今年は下落する市場が出始めるなど、相場全体が転換点にきていると感じられる年でした。マクロでの資産の流れが変化し、金融市場全体に影響を与えているようです。
リーマンショック後、各国の中央銀行は、市場から国債を買うなどの量的緩和・金融緩和政策を進めてきました。金融市場に巨額の資金が流れたことで、金融市場は急激に資産価値を高めてきていました。
しかし2015年頃から、景気の回復を受け、中央銀行は、金融政策の変更を迫れれます。国債の買い入れを終了し、バランスシートの縮小、政策金利の上昇と、金融市場に提供してきた資金を引き揚げはじめました。
またここにきて、金融資産の買い手側にも変化がみられます。リーマンショック後の金融市場では、中国企業をはじめとした、新興国からの資金が存在感を増していましたが、最近は資金の流入が減少しています。
調達金利が上昇しているため、新たな投資資金が手に入りづらくなったり、債務の増大から、手元の資金を確保するために、資金の売却を迫られるようなシチュエーションが増えているのだと想像させされます。
このように金融市場の周辺の資金の流れは変化していて、このような市場環境ですと、資産価格は下落しやすくなります。それぞれの商品は信用力が弱い順に値を落とすことになり、
・仮想通貨バブルの崩壊
・アルゼンチンやトルコといった新興国債券の暴落
・中国株式市場の下落
・オセアニアや北欧の不動産価格の下落
・米国株式市場の下落
といったイベントを引き起こすこととなりました。
足下で起こっている原油価格の下落も、需給面での材料はありますが、下落幅が大きくなった背景は、投機筋のポジション調整という極めて金融的なものと思われます。
つまりは、投資資金の流れが変化したことで、投資資金の流入が少なくなり、いままで高値で維持されていた価格が維持できなくなり、それぞれの市場で価格を下落させる必要が出てきたということになります。
そしてさらに重要なのは、こういった資金の流れの変化が今後も続いていくということではないでしょうか。
年末にはECBが債権の買い入れプログラムを終了させます。10月に買い入れ額を縮小した時には、大きな影響は出ませんでしたが、規模を考えますと、影響が全くでないとは考えにくいものです。ECBは来年に利上げの噂もあり、緊縮的な金融政策をさらに進めていくようです。
そしてFRBの金融政策の変更相場も、市場全体への影響は大きいものでしょう。12月の利上げはほぼ確実でしょうが、来年も利上げが続くのか、それとも終了させるのか、こういった動きは当然注目する必要がありそうです。
世界経済がグローバル化する中で、金融市場はボーダーレスで繋がり、世界中の資金が金融市場に流れてきています。私たちが認識すべきなのは、全ての投資資金は元をたどれば、同じようなものであり、一つの場所で大きな動きがあれば、全ての市場に影響が出るという事実でしょう。
市場では大きな資金の変化が出ています。どの資金がどの市場のどの商品に影響を与えるのか、マクロの資金の流れをもう一度確かめる時期にきていると思われます。