KAWASE BIIKI

東ヨーロッパ通貨の成長と慢心

為替市場は不安定な環境です。リスクオンが二日とつづかず、新興国通貨やここまで買われてきた通貨に、調整売りが出やすい状況となっています。これからしばらくは、米国長期金利低下を発端とした、米国ドルの動きが鍵を握ることなりそうです。

 

 

 

そういった環境の中で、大きな動きを予感させるのが東ヨーロッパの通貨となります。

地理学上は東ヨーロッパに分類して良いのかよく分かりませんが、ユーロ圏から見て東にある国の通貨という意味で、

 

・ポーランドズロチ(PLN)

・ハンガリーフォリント(HUF)

・チェココルナ(CZK)

・ルーマニアレイ(RON)

 

を東ヨーロッパ通貨とさせていただきます。

これらの国々の特徴としては、それぞれ非資源国の工業国であり、低価格日用品や部品などが主な輸出品となります。輸出先としてはユーロ圏が過半数を占める他、ロシア・中国との関係が強い国もあります。

工業化開始はリーマンショック前で、インフラが整ったリーマンショック後に貿易量が急増、貿易量はここ10年で2倍(ユーロベース)まで伸びていて、現在も増加中のようです。海外企業の誘致に積極的に動いているため、日系企業も多く進出していて、ユーロ圏向けの商品の製造をしています。

 

こうした成長を背景に、通貨は堅調に推移。リーマンショック後に訪れた、バーナンキショック(米国テーパーリング開始)、人民元ショック、資源価格の急落といった危機を微変動で切抜けるなど、その他の新興国通貨とは一線を画す動きとなっていました。

 

 

しかし、ここまで順調に成長してきた東ヨーロッパ通貨なのですが、ここに来てその成長にも陰りが見えつつあります。

 

一番の問題になっている点は、人件費の高騰です。

人口が4カ国の合計で8000万人程度のため、急速な工業化により労働者の確保が難かしくなりました。新興国には珍しく、若年者人口が少ないと言うことも問題に拍車をかけている他、社会主義時代の名残からか、労働者の権利主張が強いことも、賃金が引き上がりやすい要因となっています。

最低賃金は、2005年頃と比較し、2.5倍程(ユーロベース)まで高騰していて、輸出競争力の点からの優位性が失われつつあります。

 

この賃金の上昇(消費の活発化)により、貿易指標が悪化。ポーランドは貿易収支・経常収支共に赤字に転落、その他の国でも今年に入り、指標の悪化が顕著になっています。この動きは来年以降も続きそうです。

さらに、この経常収支の悪化を埋めるために海外からの投資を増やしたことで、対外債務が過去最高水準まで増加しています。

こういった経常収支の赤字を、海外からの投資の促進で穴埋めをするというのは、工業発展した新興国によく見られる構図ですが、隣国トルコを見ても分かるとおり、長期的には通貨暴落の引き金になる可能性があります。

東ヨーロッパの通貨は過渡期を迎えているようです。

 

 

 

東ヨーロッパ通貨はリーマンショック前に長期で大幅に上昇しましたが、リーマンショック時には大暴落したという、非常にリスキーな通貨です。ここ10年の安定は、奇跡といって良いことなのかもしれません。

下落が始まったら、忙しくなる通貨です。ポートフォリオに組み入れたい場合には、是非是非早めの検討をお勧めしています。

 

| コラム | 12:17 | comments(0) | trackbacks(0) |
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