KAWASE BIIKI

ECBのテーパリングが遠からずやってくる

日本全面高のリスクオフ模様。特に資源国通貨の下げが大きくなっているようです。相場を牽引する材料がないのに、日本円が全面高になるという日が増えているように感じます。相場が変化しているのかもしれません。

 

 

ヨーロッパ地域のインフレ率が上昇しています。正確には資源価格の上昇のため、資源輸入国ではインフレ率の上昇が起きやすい環境になっています。スウェーデンではインフレ率が年率1.7%まで上昇し、スウェーデンリスクバンク(中央銀行)は、ここまで拡大させていた国債の買い入れ量を減らすテーパリングに舵を切りました。ユーロ圏のインフレ率も1.8%まで上昇したため、今後のECBの政策がどのようになるのかが注目されます。

 

ECBは12月の金融政策の決定会合で、国債の買い入れ量を減らしましたが、これはどちらかというと買い入れ可能な国債が減っているためで、緊縮的な方向への政策転換では無いと思われます。量的緩和はむしろ延長が決定されました。ECB自身もテーパリングであることや政策の緊縮化を強く否定していますし、ドラギ総裁の発言からも緩和的な政策を続けたいという意思が感じされます。

ECBの基準とするインフレ率は、物価の変動が大きい、食料品やエネルギー価格の変動などを除くコアインフレ率で、この値は1%弱で安定しています。まだ目標の2%台には遠く、しばらくは現在の緩和的な金融政策が続くことになりそうです。

 

ユーロ圏の失業率は直近の値で9.6%と高めの数字であるため、量的緩和は正当化されます。問題はユーロ圏の内側の話で、いつもながら、経常黒字が大きく、インフレを懸念しているドイツやベルギーなどの経済が好調な国にとっては、現在のユーロの水準は低く、高い失業率が続くギリシャ・スペインなどでは、現在の水準でも厳しいというのが現状だと思われます。実際、ドイツ国内でもユーロ安のデメリットを危惧する声が増えているように思えます。この格差は、政治の問題も絡むため、解消が難しく、共通通貨制度の弱点になっていますが、克服する必要があります。

また、アメリカの時期EU大使候補がユーロ安を牽制したことも、問題を複雑化させているように思えます。

 

 

資源価格が堅調に推移しているため、ユーロ圏のコアインフレ率ももいずれ上昇することが予想されます。2013年のバーナンキショック程ではないでしょうが、ECBのテーパリングは、世界の為替、特に新興国通貨には多大な影響を与える可能性があります。ECBの方針は、ユーロの水準と共に今年の為替の行方を占う重要な材料になりそうです。

 

| コラム | 05:27 | comments(0) | trackbacks(0) |

原油価格の現状確認

アメリカドルが上値が重い展開、日銀の指し値オペなどがあり、やや荒れ相場も大きな動きにはなっていません。雇用統計も控えていますが、それほどの材料にはならないと予想。アメリカの雇用は安定しているでしょう。

 

 

原油の話です。原油価格は年明けは安定、WTIが一度も1バレル50ドルを割ることなく、50~55ドル水準のレンジになっています。昨年末のOPECの削減合意の成果を見定めたいといったところでしょうか。OPECの報告では、目標の80%程の減産が行われて、さらに減産が進むとのことです。

 

資料から現状を確認します。

・原油在庫「日産証券」

・先物ポジション「第一商品」

・その他いろいろ(アメリカの原油生産量・稼働リグ数など)「EVOブログ」

・中・長期の需給など「IEAオイルマーケットレポート」

 

まず、アメリカの原油在庫ですが、昨年までの動きとあまり変化していません。この時期は例年在庫が積み上がる時期で、この傾向はもう少し続くかなと思います。OPECの減産の効果が現れるのは、少し先になる模様です。在庫水準自体は過去最高に近づいています。

 

先物ポジションですが、ロングポジションが過去最高水準を更新しています。1月初旬の段階で、すでに過去最高だったのですが、そこから本格的な調整も無しに、もう一段階あげてきている格好です。正直ちょっと怖い感じがしますが、少しでも下落すれば、買いが入るような環境ですので、底堅いのかもしれません。原油ETF等の増加もあり、原油価格が需給主導から、投資家主導になって生きているように感じます。これがここ数年の大きな変化なのだと思います。

 

シェールオイルの掘削リグ稼働数は増加中です。アメリカの原油生産量は微増といったところで、まだ本格増産といった体制ではないようです。ここら辺は原油価格次第なのだと思います。現状の価格で採算がとれる掘削井戸は多く、生産量の増加は続くと予想されます。一度井戸を閉じた場合でも、再生産までの日数が短いシェールの機動力が、価格調整弁の役割を担っています。

 

中長期の需給は2017年の上半期に需要超過になる予想されています。これは、OPECの減産と、各国の生産拡大次第でいかようにもなるので、予想の精度は低いものです。

 

その他の材料としては、トランプアメリカ大統領の経済政策です。シェール掘削に対する環境規制を緩めるとの見方から、供給量の増加が見込まれています。時期的には少し先の話でしょうか。また、アメリカ・イランの関係が、再悪化する可能性があり、経済制裁が再発動するような事態になりますと、需給バランスに変化が起きることになりそうです。

 

 

どうでしょうか、現状の原油業界はなんとなく落ち着いているように思えます。想定外の動きがなく、投機的には待ちの状態なのだと思います。OPECの減産の効果が見えてくるのは3〜5月頃と予想します。価格が大きく動くのもその辺りになるのかもしれません。

 

| コラム | 15:17 | comments(0) | trackbacks(0) |

アメリカドル水準の違和感

円全面高、下げ幅が結構大きくなってきています。短期的なリスクオフでしょうか。トルコリラは気にせずに、メキシコペソが上昇しているところが注目だと思います。

 

 

 

アメリカドルが高値を維持しています。アメリカドルインデックスが100前後なので、一時期よりは、下落している状況ですが、いまだリーマンショック後の最高値水準です。この水準感には多少の違和感があります。

 

為替の長期投資では、経常収支が黒字で、黒字額がさらに大きくなる(交易条件が良くなる)通貨が買い。経常収支が赤字で、赤字額がさらに大きくなる通貨が売りというのが基本です。(個人的見解です。)

前者はロシアルーブル・ノルウェークローネ、後者はトルコリラ・イギリスポンドと予想しています。特に経常収支の赤字通貨は為替介入でもしない限り強制的に売られるため、下落の確率は高くなります。

 

現在のアメリカドルはどうでしょうか。アメリカは経常赤字国で、足下と今後の資源価格上昇を考慮すると先行きの交易条件は悪化が見込まれます。先のことですが、トランプ氏の貿易政策も交易条件を悪化させる原因になると思われます。つまり、経常赤字が悪化し、アメリカドルも下落すると予想できます。しかし実際にはアメリカドルは高水準を維持しています。これが違和感の原因だと思います。アメリカドルももう少し、下落の色が濃くなってきていいような気がします。

 

 

アメリカでは、昨年11月のトランプし就任前後から長期金利が上昇しました。これは当然債券の売却を意味します。トルコでは、長期金利の上昇がきっかけで、為替が大幅に下落しましたが。アメリカドルは下落していませんで、むしろ上昇しました。債券市場から株式市場に資金が流れ、株価を押し上げる、いわゆるグレートローテーションというものが起こったということです。史上最高値のダウ平均株価がこの流れを象徴しています。

別の見方をすると、株価の上昇がアメリカドルを支えているということです。トランプ氏への政策期待といいますか、振る舞いや態度を含めたすべてがアメリカへ資金を引き寄せているように感じます。

 

その株価の先行きはといいますと、下落する可能性が高いと思われます。

足下で長期金利が上昇しています。金利の上昇は、企業の資金調達コストを悪化させます。為替高や完全雇用による賃金上昇も収益には悪化要因です。好景気で足下の決算は悪くはないですが、ここからの経済環境は必ずしもいいものではないようです。民間信用(借金)の伸びが景気を支えているという面も否定できません。

 

 

トランプ氏への期待もあり、株価はしばらくは堅調を保つと思われます。なんとなくですが、株式関係者の雰囲気は楽観的です。しかし、為替はどうなるでしょうか。いかにも上値が重いという値動きにも見えてきます。株価を支えるために、為替の下落が必要な場面も想定できます。積極的に売る段階かは微妙ですが、ここから買い上げるのはリスクが高すぎると考えます。

 

 

| コラム | 23:05 | comments(0) | trackbacks(0) |

南アフリカランドの好調をどう見るか

落ち着いた相場展開といいますか、方向感がない雰囲気の為替市場です。材料もないでしょうから、仕方が無いですね。

 

先行きが見通しにくい為替市場で、最近好調なのが南アフリカランドです。同じ新興国のトルコリラが大きく下落した中で、値を伸ばしています。昨年2016年、大きく上昇しました。特に下半期は準主要通貨の中で、最高の上昇と言っていいと思います。そしてその動きが年明けも続いているようです。中期的に見て、上昇局面にいるのは確かなのですが、この好調をどのように解釈すれば良いのか、個人的にちょっと困っています。

 

2016年は春から、プラチナ・パラジウム・金といった貴金属、ベースメタルの価格が上昇、価格上昇に伴い、数年来閉鎖していた炭鉱での採掘も始まり、採掘量も増えているようです。輸入している原油価格の下落もあり、交易条件は大幅に改善しました。貿易収支は2016年前半は黒字の月が増えました。昨年末から通貨が大きく下落したトルコと比べますと、対外債務が少なく、自国通貨立ての割合が高いのも特徴です。トルコリラの下落の引き金になった長期債の金利も、2016年はどちらかというと下落基調でした。インフレ率は上昇しているため、実質金利・リスクプレミアムが減少しています。ここまでは良い話。

相変わらず30%近い高い失業率・電力不足・高い経常赤字は現在まだ改善されていません。政治的な不安定さも残っています。リスクが低い状況ではないということです。

 

 

2016年は南アフリカへの直接投資が上昇しています。貴金属・ベースメタル上昇に伴う、資源開発系の資金が流入してきたと思われます。この流れは今後もしばらく続くと予想します。

長期債の買い手ですが、金利を求めた、欧州系の機関投資家やヘッジファンドが考えられます。そして、日本からの投資も増えていると思います。機関投資家・個人投資家ともに、金利を求める動きはあったでしょう。当然FX投資家の規模も無視できないと考えられます。年末から現在にかけては、今までトルコに投資していた投資主体も、南アフリカに投資を始めたのではないでしょうか。

こういった、金利を求めた投資の場合、保有期間は長いのですが、逃げ出すときは一気に逃げ足を早めるイメージがあります。このタイミングが鍵になると思います。

 

今後の予想ですが、難しいです。足下の動きは、昨年上半期の資源価格の影響を反映したもので、その後の変動はまだ織り込まれてい無いため、ここを確かめたいところです。3月に2016年4Qの経常収支が発表されるので注目です。赤字改善が大幅ならば、現状の動きは長く続きそうですし、改善が小さければ、天井は近そうです。足下での懸念材料は、原油価格の上昇でしょうか。エネルギーは完全に輸入に頼っているため、これが大きく上昇することになれば、鉱物系資源の上昇の影響も相殺されてしまいそうです。

 

 

貴金属価格が想定していたより堅調に推移しているため、南アフリカの交易条件も割といいように思えます。しかしどこか、さすがにこれは上昇しすぎではないのかとも思ってしまっていて不安があります。足下でインフレ率が上昇しているのも気がかりです。長期金利が上昇するようであれば、高インフレは資本流出を起こす確率が高くなり心配です。

ここまで大きく上昇してきた通貨です。下落の余地は案外大きくなっていると思われます。

 

| コラム | 13:40 | comments(0) | trackbacks(0) |

アメリカドルと経常赤字

日本円全面高、アメリカドル下落で週明け市場は始まっています。昨年11月の大統領選挙以降のアメリカドル高の動きが、先週の大統領就任式で終わり、巻き戻しが強くなった印象でしょうか。NAFTAの再交渉などの動きはありますが、材料が市場の動きを作っているという雰囲気では無さそうです。

 

 

アメリカドルをアメリカの産業から考えます。

アメリカドルインデックスは正月前後に、103ポイント台をつけ、これがピークで2002~03年以来の値になっています。また実質実効レートで見ても、同じ頃の値になっています。アメリカドルの水準は2002年頃と同水準のようです。

その頃の経常収支と比較してみますと、2002年の経常収支は、対GDP比−5.1%と大きなもので、ドルは下落基調を見せていました。経常収支は、その後2006年に−5.8%まで悪化します。これに対し2016年の経常収支は、−2%の後半だと予想されます。あまり良い数値ではありませんが、2002年と比較すると、改善されています。

同程度の為替水準で、経常収支が改善していることは、交易条件の改善、産業の強化を意味します。2002年から2016年にかけ、アメリカの産業は強くなっていることです。

 

2002年は、アメリカの住宅バブルが拡大する真っ最中です。金融工学の発達により、家計債務が増え、個人消費に回りました。これがアメリカの経済を支えるのですが、経常赤字は拡大しました。つまり外貨を稼げる産業が成長せず。債務拡大による成長だったため、中長期的には維持不可能な成長だったということです。

ドルインデックスは2006年頃に80ポイント台まで下落、それでも、アメリカの経常赤字は改善しませんでした。2007年のサブプライム危機、2008年リーマンショックを経て、一旦リスクオフで、アメリカドルが買われますが、FRBの量的緩和が開始され、ドル安の時代になります。

現在のアメリカはどうでしょうか、グーグル・アマゾン・フェイスブックといったグローバルなITサービス大手はアメリカ企業です。アップルもマイクロソフトも健在、製造業では、半導体や精密・製薬などの高度製造業は順調。そして、シェールエネルギーの開発です。エネルギーコストを一変させ、アメリカは2020年代にはエネルギー資源輸出国になると予想されています。

このように、アメリカの産業は高度化し、外貨を稼ぐ能力が強化されています。これが、経常収支の改善につながったということです。

 

もうひとつの要因は、世界的な低金利でしょうか、現在は利上げ局面ですが、それでも、2002年頃に比べれば、大幅な低金利です。アメリカの債務は海外に依存しいる部分も多く、利払いの減少は大幅な交易条件の改善になります。政府の対外債務は増えていて、民間の債務がどのくらいなのかも不明な部分もありますが、2002年頃から増えていた、危ない債務は減っているのかもしれません(いや、それはないな)。

 

 

経常収支が改善されているとはいえ、アメリカが、大幅な経常赤字であることに変化はありません。現在のアメリカドルの水準はやはり高めで、持続不可能なものと思われます。大統領が替わり、産業政策も変化していくと思われます。経常収支の数字だけでなく、産業がどのように変化していくのかも、見定めていきたいところです。

 

| コラム | 13:26 | comments(0) | trackbacks(0) |

実質実効為替レート2016年12月

2016年12月の実質実効為替レートを半年前(2016年6月)と1年前(2015年12月)のものと比較しました。
 
・ アジア・オセアニア 2016.12 半年前比較 1年前比較
   日本円 【JPY】 75.1 -6.4% 6.6%
   オーストラリアドル 【AUD】 107.6 4.0% 3.7%
   ニュージーランドドル 【NZD】 111.6 3.1% 5.5%
   中国人民元 【CNY】 126.6 -0.1% -5.7%
   シンガポールドル 【SGD】 107.3 -2.3% -1.6%
・ ヨーロッパ・その他
   ユーロ 【EUR】 90.3 -1.6% -0.1%
   イギリスポンド 【GBP】 85.3 -7.1% -14.4%
   スイスフラン 【CHF】 108.4 -1.2% -0.8%
   スウェーデンクローナ 【SEK】 84.7 -4.3% -4.5%
   ノルウェークローネ 【NOK】 92.0 3.1% 8.3%
   ロシアルーブル 【RUB】 108.6 12.7% 21.9%
   ポーランドズロチ 【PLN】 94.2 -1.2% -3.5%
   トルコリラ 【TRY】 94.9 -9.1% -8.1%
   南アフリカランド 【ZAR】 91.9 15.8% 17.2%
・ 北アメリカ・中南米
   アメリカドル 【USA】 108.6 4.2% 3.9%
   カナダドル 【CAD】 86.8 -2.3% 4.3%
   メキシコペソ 【MXN】 102.3 -4.6% -14.7%
   ブラジルレアル 【BRL】 81.3 7.3% 24.6%
 
データ期間 1994年1月〜
データ期間中の平均値を100とする。
元データはBIS国際決済銀行から。

2016年上昇幅が一番大きかったのは、ブラジルレアルでロシアルーブル・南アフリカランドと資源国が上位を占めます。2016年2月に天然資源価格が底を打ち反転したのが大きかったと思います。ブラジルレアルは年前半が強く、年後半は南アフリカランドの上昇幅が一番大きくなっています。

 

下落幅は、メキシコペソ・イギリスポンド・トルコリラの順です。メキシコペソはアメリカ大統領選挙、イギリスポンドはEU離脱投票の時に大きく下げました。イギリスとトルコは経常赤字の大きさが、足を引っ張っていたように思います。

 

その他では、年後半の日本円の下落が大きくなるのが目立ちます。アメリカドルは上昇、人民元は大きめな下落、ユーロはやや下落していますが、ほぼ変わらずとなりました。オセアニア通貨は堅調・ヨーロッパ通貨は、資源国と非資源国で、明暗が分かれています。

 

 

基本的には資源国通貨が上昇、非資源国通貨が下落という傾向だったということだと思います。この傾向は2017年も続く可能性が高そうです。資源国通貨が大きく上昇する中、原油輸出国である、メキシコペソの下落が大きくなっていることに違和感がありますが、2017年に入ってからも下落がつづいていて、アメリカとの貿易の問題の影響が出ています。これも2017年のテーマでしょう。中国・日本などその他の地域に与える影響も心配されます。

 

 

| 実質実効為替レート | 12:56 | comments(0) | trackbacks(0) |

市場はトランプ氏の貿易政策のアメリカへの影響を織り込んでいない

ポンドが下落したためか、日本円全面高、リスクオフの相場のようです。新興国通貨売られています。

 

アメリカ次期大統領のドナルドトランプ氏の貿易政策が話題になっています。輸入品に関税をかけるという方針のようです。これは、メキシコや他の国で生産しているものを、アメリカで生産するようにしたいということだと思います。現在の輸入品をさらに別の国から輸入するようにしただけでは、何も意味は無いでしょうから、国内生産にこだわりたいとのことなのでしょう。

 

この政策の為替への影響を、メキシコからの輸入を例に考えます。

メキシコで生産されていたものをアメリカで生産するには、アメリカ側で労働者が必要です。現在アメリカの失業率は4%程度と、実質的な完全雇用状態なので、ここから雇用を増やすのは困難で、生産を増やすためには、別の生産を減らさなければなりません。

現在、アメリカで生産が行われているのは、アメリカの賃金に見合った商品で、メキシコで生産が行われているのは、メキシコの賃金に見合った商品です。アメリカの賃金はメキシコよりも相当高い水準のため、現在アメリカでは、メキシコよりも高い価値を生産しているということになります。

ここからメキシコからの輸入品をアメリカで代替生産するとどうでしょうか。アメリカの賃金に見合った高い価値の生産が減り、メキシコの賃金に見合ったより低い価値の生産を行うということになります。これは生産できる価値が減少し、生産性の悪化、産業が衰退することを意味します。

自動車産業の工場移転の話もありますが、これも構造は同じです。自動車の生産がメキシコの賃金の価値しか産まない産業に変化したということです。このような産業を国内に残しておくことは、生産性の悪化を受け入れているという状態です。

 

貿易面から為替を考えます。アメリカ国内の消費量が変わらないとすると、輸入額は減少するけれど、生産の減少はより大きな額になるため、輸出額は大きく減少することになり、貿易収支・経常収支・交易条件が悪化します。ということでドル安要因になります。

 

メキシコ側では、アメリカがメキシコからの輸入品に関税をかけた場合、対抗措置として、アメリカからの輸入品に関税をかけることを検討しているようです。中国などでも同様のことが起こると推測されます。これにより、アメリカからの輸出も減少するため、アメリカ経済にはマイナスですが、上記の生産性の悪化の方がより影響が大きいと思われます。どちらにせよ、アメリカが得をするということはありません。残念ながら、各国にも悪い話です。

 

 

トランプ氏の真意がわかりにくいため、実際にどのようなことになるかは予想しづらい面もあります。ただの外交上の条件闘争の面もあるのでしょう。しかし、最近の話を聞く限りでは、輸入品への関税をかける可能性は否定できません。

為替相場では、メキシコペソや人民元はこの政策に反応を示しています。しかし最も影響が大きいと思われるアメリカドルは、長期金利とともに上昇を続けています。今後トランプ氏の政策の実現性が高まるとともに、大きな下落が起こる可能性が高まりそうです。

 

| コラム | 23:39 | comments(0) | trackbacks(0) |
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