KAWASE BIIKI

ブラジル金融政策の特異性

新興国の政治・経済はそれぞれ特徴があり、いろいろと面白いのですが、その中でもブラジルの金融政策が独自の路線へと向かっています。

ブラジルの金融政策の特徴は、13.25%という高い政策金利です。インフレ率は8.47%ですので実質金利(※)は4%台後半という大きな値となります。他の主要国の実質金利が、日本も含めマイナスの場合が多いと考えると、この金利がどれだけ高いかが分かるかと思います。

この金融政策の目的は、通貨価値を安定させ、高いインフレ率を抑えることです。通貨レアルは3月に大きく下落した後、反発しており、インフレ率はまだ高い状態が続いていますが、為替を安定させるという意味では、一定の効果を挙げていると思われます。しかし、市中金利も高くなるため、国内経済にはやはり悪い影響を与えていて、GDP成長率はマイナスで、失業率も今年に入ってから上昇しています。
長い間高インフレで悩まされていたということもありますが、多くの国で経済成長を優先させている中で、国内のインフレ率をここまで優先している国は異例です。

ブラジル経済は、鉱物・食品・木材・エネルギーといった資源だけでなく、自動車や航空機、化学、薬品、など産業が多彩で、新興国の中では、先進国に近い経済体制が出来上がりそうな気配がもありました。しかし、鉄鋼石価格が下落し始めた2012年ごろから、不安定な兆しを見せ始め、昨年のワールドカップ開催時には、公共事業も減り始めたためか、すでに不況入りが噂されていました。また政権が格差縮小対策として、最低賃金を大きく引き上げたことも雇用に影響を与えたと思われます。

インフレ率は、現在も政府目標を上回っており、今後も政策金利は上昇すると予想されています。実質金利の上昇は、一般に為替には好局面で、買い推奨といえるところなのかもしれません。しかし経済の状況を考えると、資本が海外に流出し、株価の下落と共に、通貨も下落しやすいと考えられ、投資しにくい局面とも考えられます。
もともとボラティリティが大きい新興国通貨ですが、今後も難しい動きになりそうな気がします。


(※)実質金利の算定には、本来は期待インフレ率を使用しますが、ここでは手に入りやすい直近のインフレ率を使用しています。

| コラム | 19:43 | comments(0) | - |

原油価格はしばらくはレンジ相場か

久しぶりに原油価格の話です。
昨年末から大幅に下落したていた原油価格ですが、直近では、56ドル〜61ドル程度のレンジ相場となっています。

現状を需給の面から確認していきます。

まず需要側ですが、こちらはそれほど延びていないようです。長期的に見れば、新興国での増加が確実視されますが、足元では、世界経済の伸びは鈍化中です。中国が備蓄のための輸入を、大幅に続けていましたが、最近終了したようです。
投資対象としての需要は大幅に増加中、値ごろ感があるためか、原油価格に連動するETFの買いポジションが、個人、機関投資家合わせて、増加しているようです。

供給側ではOPEC会合が先週おこなわれましたが、大方の予想通り、生産目標を据え置きました。減産は行われません。実際にはOPEC各国はそれぞれ供給量を増やしています、シェア確保という名目ですが、原油価格下落による、政府収入減少を食い止めるために、生産増加が必要なものと思われます。また設備を増強したイラクや、経済制裁が解除される見込みのイランでは、更なる増産を求める声もあるようです。
注目のアメリカシェールオイルですが、価格下落の影響で石油掘削リグの稼動数は、最盛期のおよそ1600から、最新では635と、6割を超える大幅な減少となっています。しかし石油生産量自体は逆に増加している状態です。これは小規模、低効率のリグが削減され、高効率、大規模なリグでは生産を拡大していることが要因です。また油田探索・掘削技術の進化、小規模零細企業の淘汰などが継続中で、生産性が飛躍的に上昇し、相当な価格競争力が備わったもようです。今後も、現在水準のの原油価格が続けば、生産は拡大される見込みです。


ということで、基本的には供給過剰の状態で、足りなくなった需要を投資家が支えているといった構図です。各国の石油在庫も過去最大の水準です。
中国の備蓄需要が一段落したため、この先価格調整の可能性も指摘されています、それでも長期的に見た場合の価格上昇確率は高いとされ、下落時には投機的な買いが、大幅に増加すると考えられます。

方向感の無い相場の予感です。
しばらくは、現在のレンジ水準が続くのかもしれません。


| コラム | 05:10 | comments(0) | - |

黒田発言をどう見るか

特に何も無い日かなと思っていたので、急にいろいろと動き始めて驚いております→→→

黒田氏の発言ですが、とりあえずは素直に円高けん制と受け取ろうかなと思います。口先介入とまでは言うのは厳しいと思いますが、たまたま出てしまった文言というよりかは、為替市場に対してメッセージを伝えたと考えたほうが自然のような気がします。今回は、実質実効為替レートの話を持ち出したりしていたので、日銀内部でも現在の日本円について、何らかの問題がある水準であると考えていたと推測できます。黒田総裁が自ら発言したことで、日銀発信での、これ以上の(実質実効ベースでの)円安誘導は、事実上できなくなったのと考えてよいと思われます。今後の金融政策に影響を与えそうです。

個人的には、最近の日本円の動きについて、ちょっと読みづらい、苦手としていたところがあったのですが、これでだいぶ分かりやすくなってよかったかなと思っています。

今回の発言に関する他通貨の動きですが、全体的には円高方向になっております、ただアメリカドルほどは下落していないようです。発言内容を考えると、ドルだけが大きく下落するのは、理に適いませんが、突然のイベントだったため、動きづらいのかもしれません。新興国通貨も対円での値下げ幅はまちまちのようで、対ドルでは大幅に上昇した通貨もあります。

なにか突然不安定になったような為替相場環境、これからの動きを注意する必要がありそうです。


| コラム | 22:51 | comments(0) | - |

フラジャイル・ファイブの最近の経済状況

アメリカの利上げがとりだたされていますが、新興国、特にフラジャイルファイブと呼ばれた通貨の下落が懸念されます。

フラジャイルファイブとは、経常赤字水準が高く、資本の引き上げに対して脆弱な通貨を持つ新興国の総称で、「ブラジル・インドネシア・インド・トルコ・南アフリカ」を指します。テーパリングが始まった時期に、通貨が大きく下落したことで話題になったので、覚えている方も多いと思います。

ではそのフラジャイルファイブ、現在の経済状態はどうなっているでしょうか。

直近の指標です。
?
実質実効
為替レート
経常収支
GDP比
インフレ率?失業率?
ブラジル97.3?-4.17%?8.17%6.40%??
インドネシア101.2?-2.95%7.15%5.94%??
インド97.7?-1.70%?4.87%4.90%??
トルコ106.5?-5.70%?8.09%11.20%??
南アフリカ?82.4?-5.40%?4.50%26.40%??

全体的には相変わらず脆弱ですが、新興国としては標準的で、特徴的な弱さがあるようには感じません。経済発展が進んでいるためか、インドは特に悪くない値ではないでしょうか。南アフリカは、相変わらずの失業率で・・・成長していないような気さえします。ブラジル・インドネシアは想像していた数値よりは、いい感じです。一番注意しなければならないのはトルコでしょうか。トルコリラは大きな下落が発生する可能性が他の通貨よりも少し高いのかもしれません。

リーマンショック時には、新興国だけでなく、オーストラリア、ニュージーランド、カナダといった先進資源国、イギリスやスウェーデンでも通貨が大きく下落しました。アメリカの利上げ自体は経済危機ではないですが、アメリカドルが大きく上昇局面では、逆方向に動く、大きく下落する通貨も必要になります。現在どの通貨が強すぎるのか、通貨の流れはどうなっているのか、冷静に調べていきたいと思います。


*実効為替レートは、1994年からの平均値を100とする。

 データ元 「TRADING ECONOMICS」
        「BIS」



| コラム | 23:35 | comments(0) | - |

各国でGDPがマイナス成長に

2015年1-3月期のGDP値が出揃ってきました。
ざっと見た感じですが、不況期とは思いませんが、マイナス成長の国多い印象です。
代表的なところだけですが、

アメリカ?-0.7%?
カナダ-0.1%?
スイス?-0.2%?
ブラジル?
-0.2%

こんな感じです。一つずつ見ていきましょう。

まずアメリカですが、-0.7%と大幅なマイナスです。季節要因、天候不順、港湾ストライキ、シェール関連の設備投資の減少、そしてドル高、といろいろ言われていますが、基本的に経済が不調だったのかなと思います。直近では、雇用、住宅関連に、一部強めの指標も出て、今期さらに下落とは考えづらいですが、どうでしょうか。利上げの時期に影響を与えそうです。

カナダは、資源関連の下落が大きかったようです、一月に急遽利下げをし、その後の各国の利下げラッシュの先頭を走った形でしたが、その後も、鉄鋼石、原油、木材、金と下落を続けており、経済はまだ弱いようです。アメリカ経済停滞の影響もあったかもしれません。通貨は下がり気味でしたが、こちらは直近やや持ち直している印象です。

スイス経済については先日もすこし書きましたが、やはり通貨高の影響が出てきているのかなといった印象です。ギリシャ情勢にもよりますが、今後さらにフラン高が進行するようですと、中央銀行による何らかの措置が行われるのではないかと予想します。ただ、あまり有効な手は打ちにくいかもしれませんが。

ブラジル経済は厳しさが増しています。高インフレ→政策金利切り上げ→経済停滞→通貨安→インフレ悪化と悪循環状態です。経済政策の失敗もありますが、資源安が続く限りは、低迷が続きそうです。失業率も上昇中で、回復はすこし遅いと思われます。



各国不振の理由はさまざまですが、共通点を探すとすれば、資源価格下落の影響が大きいかなと思われます。ただ資源を輸入する側で、それほど成長が伸びた様子も無いのでなんともいえませんが、輸出する側は大変のようです。
今年はこれからすぐに、ギリシャ問題や、アメリカの利上げと、大きくて派手なイベントが連続しますが、資源価格の動向も、経済を占ううえで、大きなキーワードになるのかもしれません。


| コラム | 22:17 | comments(1) | - |

スイス経済とフラン高

一月にユーロに対しての無制限為替介入を終わらせたスイスですが、実質実効レートのが114.8(1994年〜の平均が100)と高い値になっております。あれから4ヶ月が経ちましたが、スイス経済はどうなっているのでしょうか。


主な経済統計
?消費者物価指数CPI?4月?前年同月比?−0.2%
?生産者輸入価格?4月?前月比?−2.1%
?実質売上高?3月?前年同月比?−2.8%
?失業率?4月?3.3%
?貿易収支?3月?25.2億フラン


やはり物価関連の指標は弱めの値になっております。資源価格下落の影響もあるのかもしれませんが、低い水準です。失業率、貿易収支は特に大きな変化はなく、ここ数年のスイスの通常値です。一点気になるのが、実質売上高です、通貨高局面では、物価下落のため、実質の小売の売り上げは、伸びるかなと思いましたが、落ち込んでおります。下落幅もなかなか大きいものです。通貨高のため、外国人観光客によインバウンド消費が減っているのかもしれません。

GDP成長率が来週発表ため、なんとも言いがたいですが、全体的に見て、まあまあの経済状態といってよいと思います。スイスフラン高の影響は今のところ軽微のようです。


スイス中央銀行の政策金利はー1.25%と非常に低い世界最低水準で、実質金利を考えてもマイナス水準です。これが通貨に影響を与えて、もう少し位はフラン安になってもいい感じはしますが、どうでしょうか。
ヨーロッパでは、またすぐにギリシャ問題が本格化してくることが予想され、ヨーロッパの通貨は不安定になる時期です。危機に強いフランは上昇するのか、ユーロにつられて下落するのか、注目していきたいと思います。



| コラム | 01:40 | comments(0) | - |

中国製造業停滞の理由 まとめ

風雲急を告げる中国経済ですが、ここのところ為替市場での注目度、今年のテーマとしての存在感が増してきていると感じられます。
そこで、いまさらですが、中国の経済停滞の理由を製造業を基準にまとめてみました。
中国経済が今後どうなるかを考える上で参考になればと思います。

【中国製造業停滞の理由】
1、企業物価の下落
3月生産者物価指数(PPI)は前年比 -4.6%と非常に大きく下落しております。下落は、12年3月から37ヶ月連続です。
リーマンショック以降、中国国内では設備投資が活発になり、過剰生産設備のもと、需要に対して供給過多の状態が常態化しており、物価を下落させております。またここ数年は資源価格、商品価格が下落しており、生産者物価の下落に追い討ちをかけております。

2、人件費の上昇
北京市の最低賃金の推移ですが、
 2013 1400元/月
 2014 1560元/月
 2015 1720元/月
と毎年10%を超えるペースで上昇しております。他の都市も基準は違えど、上昇率は10%程度となっております。
今年は経済低迷を受け、上昇幅を抑えるかもしれないと考えておりましたが、そんなことはありませんでした。
国民からの期待といいますか、国民からの支持を考えると変えづらいのかもしれません。

3、人民元の上昇
人民元の3月の実質実効レートは139.3と非常に高い値で、過去最高値となっております。この水準は他の通貨ではなかなかみられない値で。操作された通貨なので仕方が無いのかもしれませんが、本当に相当高い水準です。
人民元は2005年から2008年までにまでに対米ドルで約30%上昇させた後、2010年からさらに10%上昇してきました。その後は、米ドルに対してやや幅の持ったペッグ制をとっております。FRBのテーパリング開始後は、米ドルが他の主要通貨に対して、大きく上昇しているため、結果的に人民元も大きく上昇することとなっております。

4、高い貸出金利
中国人民銀行の政策金利は5.1%となっております。
昨年秋から3度の利下げを行っておりますが、物価に対しては、まだ高い水準にあります。
また、市中の銀行からの企業への貸出金利は、貸し倒れリスクの増加の懸念もあり、下がっていないとのことです。


以上、主だった原因を並べてみましたが、他にも環境コストの増加や、東南アジア、南アジアといった、人件費の低いライバルの登場、主な輸出先だった、ヨーロッパ経済の停滞など、考えられる理由を並べるのには、苦労しない状態となっております。

売り値は下がり、賃金は上昇、資金調達は難しく、相場環境は悪化、これでは製造業では、利益が出ない構造です。

中国政府も、内需を見ながらぎりぎりの政策を進めているように感じます。李克強氏以下エリート経済官僚たちが、不動産バブル退治をはじめ、この経済状況に対応するため、非常に努力をなされているようには見えます。しかし、多額の不良債権や、地方政府の債務額等々を考えると、経済全体で大きな調整が必要となるのは避けられない状況のようです。



参考にさせていただいたブログ


| コラム | 00:30 | comments(0) | - |
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