KAWASE BIIKI

FOMC金融政策の維持と緊縮的な動き

ご存知の通り、先週のFOMC金融政策決定会合ですが、ゼロ金利政策が維持され利上げは行われませんでした。しかし、アメリカの金融政策は、日に日に緊縮政策の様相を強めているように思えます。

FRBの利上げ以外に、アメリカの金融政策を緊縮的にする要因として次のようなものが考えられます。
  1. 世界の物価が下落する。
  2. アメリカ以外の国で利下げをする。
1.については資源価格下落の影響を受け、下落とまでは行かないまでも、ディスインフレ傾向が強まっています。それによりアメリカの実質金利が上昇しており、間接的な利上げを行っている状態になります。
2.については、アメリカ以外の国で、緩和的な動きが強まる気配があるということです。経済の悪化が懸念される新興国・資源国における利下げはもとより、ユーロ圏や日本でも、量的緩和の拡大が期待されるています。そしてなんと言っても中国において、大規模な金融緩和が行われる可能性もあります。もちろんこれらは相対的なものですが、アメリカに対して緊縮的な効果を生むことになりそうです。

つまり、今回アメリカは利上げをしませんでしたが、外部環境が自動的に、アメリカに緊縮政策を促していることになります。理由は分かりませんが、経済用語で言うところの「神の見えざる手」の亜種みたいなものかもしれません。

これらの動きは、アメリカドルに対して上昇圧力を強めることになると同時に、同国経済に対しては信用収縮を促します。株価にとっても下落方向に動くものと思われます。逆に考えますと、これらの動きがあるため、FRBは利上げができない、する必要が無いのかもしれません。

FRBが行う政策決定は、基本的には絶対のものであり、このような後付のような考察はあまり必要ではないと思われます。ただ何が起こるかわからない金融市場です。常に幅広い考え方を持っていたいものです。


| コラム | 21:50 | comments(0) | - |

実質実効為替レート 2015年8月

各国の実質実効為替レート 2015年8月です。

・ アジア・オセアニア??(先月比)
   日本円【JPY】68.31.3
   オーストラリアドル【AUD】104.7-0.5
   ニュージーランドドル【NZD】103.8-0.4
   中国人民元【CHY】137.9-0.9
   シンガポールドル【SGD】111.5-0.8
???
・ ヨーロッパ・その他??
   ユーロ【EUR】90.52.4
   イギリスポンド【GBP】102.30.7
   スイスフラン【CHF】112.7-1.8
   スウェーデンクローナ【SEK】85.6-0.2
   ノルウェークローネ【NOK】87.1-1.3
   ロシアルーブル【RUB】91.9-12.3
   ポーランドズロチ【PLN】100.7-0.2
   ハンガリーフォリント【HUF】102.40.6
   トルコリラ【TRY】100.0-5.1
   南アフリカランド【ZAR】79.1-2.1
???
・ 北アメリカ・中南米??
   アメリカドル【USA】104.91.3
   カナダドル【CAD】93.6-1.6
   ブラジルレアル【BRL】87.2-6.8
   メキシコペソ【MXN】84.3-2.3


データ期間 1994年1月〜
データ期間中の平均値を100とする。
元データはBIS国際決済銀行から。


日本・ユーロ圏・イギリス・アメリカと主要国と、新興国では唯一ハンガリーが上昇しています。ロシア・ブラジル・トルコで大幅に下落しています。原油を始めとする資源国通貨で非常に厳しい状況のようです。また中国がドルペッグを緩めたのが8月の特徴ですが、その影響も一部見受けられます。

| 実質実効為替レート | 02:16 | comments(0) | - |

人民元はいつ下落するのか

注目の中国人民元ですが、今月は安定した価格で推移し、ゆるやかな米ドルペッグ制が継続しています。しかし、人民元は大幅な割高水準であり、今後価格の下落が予想されます。人民元の価格下落は、起こるか起こらないかの問題ではなく、時間の問題です。そしてその時間とは、あと1年ほどになるのかもしれません。

為替の世界で、予想が一番難しいのは、為替がいつ動くのかです。方向感や値幅は、水準や指標などから予想できる場合もありますが、時間の予想だけは厳しいものがあります。人民元においても同様で、下落することは予想できました。時期については「今後3年以内」ぐらいの長期での期間を示すことが、比較的確実な予想だと思われます。

より正確な予想をするための鍵は、中国の外貨準備高です。現在中国では資本の流出が起きており、投資家・企業・個人による「外国通貨買い・人民元売り」の取引がされています。この取引による人民元の下落を防ぐため、中国政府が「米ドル売り・人民元買い」の為替介入を続けています。この介入の資金が、外貨準備になります。
中国の外貨準備の残高は、
 6月末  3.69 兆ドル
 7月末  3.65 兆ドル
 8月末  3.56 兆ドル
と減少しています。つまり為替介入の限界が、いずれ来るということになります。そしてその限界の時こそが、人民元大幅下落のまさにその時となるのです。
シティグループによりますと、中国の外貨準備の限界値は2.6兆ドル程度と試算されています。現在の資本流出水準が続くことになりますと、その限界は、「8〜24ヵ月後」にくると予想されます。振れ幅の大きな予想になりますが、良い目処がついたかと思われます。どうでしょうか。

先月の人民元価格変動から、一気に資本流出高が増えたため、この流出水準は一時的な可能性もあります。また、外貨準備の限界が近づくと、資本流出が加速する恐れもあります。人民銀行から発表される毎月末の外貨準備高に注目です。そしてもうひとつ、これからの時期は、中国政府が許可さえすれば、いつでも人民元が下落します。上記の予想はぎりぎりまで粘って、「8〜24ヵ月後」ということです。中国政府は急な行動を取る可能性もあります。当然、注意が必要です。


| コラム | 23:52 | comments(0) | - |

スイスフランと中央銀行の憂鬱

先週ですが、スイス国立銀行のジョーダン総裁が、「スイスフランは割高」「介入の可能性もある」と発言しています。スイスフラン(CHF)といえば、年初のユーロペッグ廃止後は高値圏を維持しています。しかし最近では、ユーロに対して弱めの動きになっていたため、この発言は少し意外に感じました。

最近の為替市場は、世界的にリスクオフの流れが続いており、安全資産としてのフランの需要は高い状態です。新興国、資源国の為替価格が大幅に下落しているほか、比較先であるユーロの価格が上昇しているため、フランの実効レートは引きあがる形になっています。また、スイスは資源輸入国であり、資源価格の下落が、消費者物価に影響を与え、実質レートを上昇させています。現在の実質実効為替レートは114.6(※)と高い状態にあり、確かに2009年に大幅な為替介入(ユーロペッグの導入)をした時の値に近づいています。

スイス中銀としては、ユーロペッグ廃止後、マイナス金利を導入・短期的な介入をするなど、通貨高抑制に力を注いできました。為替上昇の抑制には成功している状況ですが、スイスの経済状況はあまりよいとはいえず、この状況がこれ以上続くのは耐え難いのかも知れません。

世界的な金融緩和の影響を受け、ここ数年間は、スイスフランのみが、実質的な安全通貨であり、世界のリスクを背負ってきました。今回アメリカの利上げが想定されていますが、もし利上げが実行されれば、この状況は緩和される可能性もあります。

実際には、このタイミングでの大幅な為替介入は考えにくい状況です。しかし、実行力があり、実績もある中央銀行です。ユーロが大幅に上昇した際や、アメリカの利上げが後ずれしそうな際には、大きな動きに注意が必要になりそうです。


(※)2015年7月の値 1994年〜の平均値を100とする。

| コラム | 11:56 | comments(0) | - |

日本円(JPY)独歩高の理由と考察

アメリカの雇用統計も想定内の結果に終わり、相場はとりあえず一段落。まだまだリスクオフ展開が続きそうな状況ですが、日本円の強い動きが目立ちます。日本円独歩高というのはいいすぎでしょうか。原因を探ってみます。

思いついた限りですが、適当に・・・・・。

1.ユーロ圏の量的緩和の継続発表
これは一時的な理由です。先々週ぐらいまではユーロも強めの動きをしていましたが、先週のドラギECB総裁の量的緩和継続・強化発言により、ユーロが弱まったため、日本円の独歩高をより鮮明にしました。

2.外国人投資家による日本株の売却額が過去最高
何度か書いたことがありますが、日本株の下落は、日本円を上昇させます。東京株式市場は外国人の比率が高いのが特徴ですが、外国人投資家が日本株を買うときは、為替差益(差損)をヘッジするため、日本円を売却します。これが、日本円を下落させると共に。日本株価格と日本円価格に逆の相関性をもたらします。現在、外国人投資家による日本株売却額が過去最高水準のため、日本円には強い上昇圧力がかかることになります。

3.米国金利の低下
アメリカの利上げ時期が不透明なためか、アメリカの長期金利が高まっておらず、米ドルの上昇を阻害しています。

4. 円キャリートレードの巻き戻しの増加
数ヶ月前から円キャリートレードの巻き戻しは始まっていましたが、先月24日辺りから巻き戻し量が増加したように感じます。
具体的な話というには恣意的過ぎるのですが、最近気がついたことです。ヤフーファイナンスの「FX・為替」「レート・チャート」のページで、YJFXの各通貨ペアの売買比率が見れるのですが、高金利通貨を中心に売りの注文が増えています。以前だと通貨が下落したら際には、売買比率が「買9:売1」や「買8:売2」のイメージだったのですが、最近では売り買いが拮抗している状態や、売りのほうが多い状態も見受けられます。これは個人投資家のマインド・投資行動の変化を示しています。我慢強いとされる日本の個人投資家が動き出したというのは注目に値します。

5.中国資本流出の増加
これは間接的な話です。中国から資本が流出しています。これにより人民元に売り圧力がかかりますが、中国人民銀行は準ドルペッグを続けていて、人民元買い、アメリカドル売り介入を行っているという状況です。実は、この状況が米ドルを下落させ、間接的に日本円を上昇させています。
説明しにくいので、例を示します。

(例)
投資家
(資本流出)

 【人民元売 3兆】
 【米ドル買 1兆 ・ユーロ買 1兆 ・日本円買 1兆】

人民銀行
(為替介入)

 【人民元買 3兆】 
 【米ドル売 3兆】

(差し引き)

 【人民元    0】
 【米ドル売 2兆 ・ユーロ買 1兆 ・日本円買 1兆】


つまり、資本を流出させている投資家は、必ずしも米ドルを使用しているわけではないのですが、人民銀行の為替介入は対ドルのみのため、歪といいますか差が生まれるというわけです。分かりづらいですね。また実際には、量の問題もあり、為替に影響を与えるかは不明です。覚えておく必要も無いかもしれません。



しばらくは日本円が上昇しやすい局面がつづきそうです。日本円を売るというポジションは危険性が高くなることが予想され、注意が必要です。

| コラム | 23:11 | comments(0) | - |

WTI原油市場のボラティリティ

リスクオフが進み為替市場の変動率が高くなっていますが、原油価格市場が驚くほど高い変動率になっています。
具体的に見ていきます。

?終値(ドル・バレル)
?変動率(前日比)
2015年8月24日??? ?38.24? ????????? -4.51%
?25日
?39.31? ?2.80%
?26日??? 38.60?? -1.81%
?27日?42.56?10.26%
?28日?45.22?6.25%
?30日?44.85?-0.83%
?31日?49.20?9.71%
?9月1日?45.41?-7.70%
2日?46.25?? 1.85%
3日????????? ???????????? 46.75????????? 1.08%


24日が直近での最安値で、そこから上昇している状態です。24日は為替市場も大きく動いた日です。
為替と比べても、日々の変動率が高いのが分かると思います。この表は終値ベースのため、日中の動きはさらに大きくなります。もともと原油を含めた商品先物市場の価格は大きく動くものですが、最近ではこの幅がさらに大きくなっています。2桁の値動きというのは原油市場でもそこそこ珍しいものです。

この値動きの原因ですが、27日・28日はそれほど大きなニュースは無かったかと思います。これまでの価格下落の動きの反動と考えてよいでしょう。その後は、OPECがOPEC外の原油生産国と、「原油生産量・原油価格を調整する話し合いをする予定がある。」という情報が広まったための動きと思われます。

この40ドル前後という価格ですが、北欧・ロシア・中南米・アフリカなどの油田では、利益が出ない水準と想定されます。アメリカでもシェールオイルを中心に厳しい情勢です。運転資金の調達先であるハイイールド市場の動きも心配されます。中東でも、利益自体は出るでしょうが、より高い価格を想定して国家予算を組んでいるため、国政という点では厳しいと思われます。

現在、世界各地で在庫が積みあがっているほかに、近いうちに経済制裁を解除されたイランの原油が世界市場に出荷される予定です。各地で油田の閉鎖も数多くあるでしょうが、しばらくは供給多寡の状態が続きそうです。


| 経済データ | 00:08 | comments(0) | - |

中国政府 米国債売却 

中国政府が米国債を売却しているという話です。中国の米国債保有額は、日本と並び、世界最大規模といわれています。外貨準備の一部として保有されていますが、先週あたりから、売却を行っているという情報が増えてきました。

売却の理由は人民元の価格維持です。人民元レートの変更後、中国からの資本流出が増大し、人民元の下落圧力が高まっています。中国人民銀行は、人民元の価格下落を防ぐため、アメリカドル売り、人民元買いの、為替介入を行っていて、この介入の原資として、米国債を売却して得た、アメリカドルを利用するようです。外貨流出が急だったため、手持ちのアメリカドルが不足していると思われます。

中国からの資本流出規模は現在、4兆円/月程度と推定されていて、人民元の下落を防ぐためには、同等量のアメリカドルが必要になります。中国の外貨準備はおよそ400兆円ですから、しばらくは持ちこたえることはできますが、これ以上流出規模が大きくなると、防ぐのが難しくなりそうです。無論、外貨準備は、そのすべてを資本流出対策に使うことはできません。少なくても、中国国内のドル建て債務額(100兆円程度)は残しておきたいところです。

人民元が下落した場合の資本流出は、かなり前から想定されていましたが、人民銀行および政府の想定よりも、流出規模が大きかったように思えます。外貨の不足は、想定外の事態かも知れません。中国政府は、自分たちが行った人民元レートの変更の影響についてかなりナーバスになっているように思えます。
人民元の市場化は、中国政府の悲願ですが、まだまだ準備不足の感が否めません。これからも人民元のレートともども、中国政府の振る舞いに振り回されることになりそうです。もちろん人民元の大幅な上昇は無いでしょうが・・・・・・。


| コラム | 23:30 | comments(0) | - |
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