KAWASE BIIKI

ファンダメンタルズ分析2-1 「為替と物価変動」

ファンダメンタルズ分析 2−1

「為替と物価変動」

 

 

通貨の基本的性質として、通貨と物価には、

「物価が上昇すると、上昇した物価の分だけ通貨価値が下落し、

逆に物価が下落すると、下落した物価の分だけ通貨価値が上昇する。」

という関係があります。

 

(需給が変化せず)物価が2倍になった場合に、同じ量の通貨では半分のものしか買えなくなる(通貨の価値が半分になっている)と考えれば分かり易いと思います。このような性質があるため、インフレ率の高い国通貨は下落しやすく、インフレ率の低い国の通貨は上昇しやすくなります。

 

 

 

・金利とスワップポイント

 

このように通貨には、物価変動により価値が変動するという性質があります。しかしこれは通貨を長期で保有する場合にはその価値を維持させることが困難になると言うことを表しています。そのため、通貨は保有者に物価変動分の利息を付与することによって通貨の価値の保持を可能にしています。

例えば、インフレ率10%の通貨に10%の利息を付与することで価値を保存させるということです。

これは、「10%のインフレにより通貨そのものの価値が10%下落するけれど、利息を10%付与することで、その下落分穴埋めをしてくれますよ。」という意味になります。

 

為替取引(FX)では、この物価変動に対する金利付与をスワップポイントという仕組みで実現しています。

「買い」ポジションに金利分のスワップポイントを付与、「売り」ポジションからは金利分のスワップポイントを徴収することで物価変動による通貨価値の変動に対応しているのです。

逆にいいますと、スワップポイントは物価変動による通貨価値を補正するための仕組みであり、これによって為替取引において損得が発生することはないということになります。

 

このような仕組みが備わっているため、為替取引においては、

「本質的には高金利通貨も低金利通貨も存在しない」

(高金利通貨は、高いスワップポイントがもらえるが、その分理論的価値が減少する。逆に低金利通貨はスワップポイントは少ないが、理論的な価値の減少が少ない。)

ということになり、これは大変重要な概念になります。

 

 

 

・実質金利と政策金利

 

しかし実際には、インフレ率と金利を全く同じにすることは困難なため、インフレ率と金利には差ができてしまいます。このインフレ率と実際に付与される利息の差を「実質金利」と言います。付与される金利の基準は、各国の中央銀行が決定し、「政策金利」と呼ばれます。

 

「実質金利」 = 「政策金利」 ー 「期待インフレ率」

 

この実質金利がプラスの場合はその通貨を保有していると利息による収益を得ることができ、マイナスの通貨を保有する場合は損失が出ることになります。

 

| ファンダメンタルズ分析 | 22:50 | comments(0) | trackbacks(0) |

ファンダメンタルズ分析 2 - 2 「実質実効為替レート」

ファンダメンタルズ分析 2 - 2 「実質実行為替レート」

 

☆実質実効為替レート

 

私たちが普段目にする1ドル=100円のような為替レートは実勢レートと呼ばれ、二つの通貨の取引価格を表します。しかし、通貨は多数存在し、また前章で示したとおり、物価変動により価値が変わってしまうため、この実勢レートは為替そのものの価値を示すのには不向きになります。

 

そこで、通貨価値を指数化し、それぞれ指数化したレートを各国の貿易額により加重平均し、さらに、物価変動率により調整したレートを「実質実効為替レート」と呼びます。

本質的にはこの実質実効為替レートが「通貨の強さ」そのものを表すことになり、実質実効為替レートが上昇した場合が通貨価値が上昇したこととなり、実質実効為替レートが下落した場合が通貨価値が下落したこととなります。

 

FX取引ではこの実質実効為替レートが「実質金利が0の場合のスワップポイント込みの損益」を表すため、とても重要な指標となります。つまり実質実効為替レートが上昇した通貨を買い、実質実効為替レートが下落する通貨を売れば利益が出せると言うことになります。

 

実質実効為替レートは、BIS(国債決算銀行)が算定したものがウェブサイト上で公開されています。月1回の更新のため、日々の利用には不向きですが、長期投資で参考にする分には非常に役に立つ指標です。

 

 

 

☆実効為替レート(名目実効為替レート)

 

為替の強さを表す指数のうち、各国の貿易量の加重平均は行なうものの、物価変動による調整を行なわないものを、「実効為替レート(名目実効為替レート)」と呼びます。

物価変動による調整を行なわないため、正確な強さを表すレートではないのですが、物価変動を考慮しないですむような短期(数ヶ月程度まで)での分析には十分役に立ちます。

 

主要通貨の実効為替レート

・DXY 米国ドルインデックス(ドル指数)

・JXY 日本円インデックス

・EXY ユーロインデックス

・BYY イギリスポンドインデックス

・SXY スイスフランインデックス

・AXY オーストラリアドルインデックス

・CXY カナダドルインデックス

・ZXY ニュージーランドドルインデックス

 

これらはTreadingView(無料会員登録が必要)で見ることが出来ます。基本的には日足(前日終値ベース)ですが、米国ドルインデックスはリアルタイムで更新されているものもあり、非常に使い勝手がよいものとなっています。

 

またその他の通貨につきましても、BIS(国債決算銀行)が算出したものが2日遅れでウェブサイト上で公開されています。

 

| ファンダメンタルズ分析 | 22:40 | comments(0) | trackbacks(0) |

ファンダメンタルズ分析4 - 2 「クレジットサイクル」

ファンダメンタルズ分析 4-2

「クレジットサイクル」

 

 

クレジットサイクルとは、クレジットつまり信用(債券・借金)の増減サイクルのことです。ある地域のクレジットは経済状態によって循環するためこのように呼ばれます。

 

クレジットサイクルには、後退期・修復期・回復期・拡大期の四つの段階があるとされ螺旋を描くように循環するとされています。

 

拡大期に増大したクレジットが限度を超え、クレジットシュリンク(信用収縮・債務縮小)が起きます。これが後退期、企業の倒産個人消費の減少が増加します。これを金融政策や財政政策で立ち直らせるのが修復期、クレジットが縮小したことで、改革が進んだ企業や個人の活動が活発になるのが回復期、そして事業を拡大させるためクレジットを再び増加させる拡大期に戻ります。

 

クレジットサイクルの周期は全体で10年程で、拡大期が一番ながく続きます。また当然毎回同じ長さというわけではなく、経済状況や金融政策などによって変化します。

本来は、国や地域・業種ごとに異なったクレジットサイクルを持つとされていますが、経済や債券市場のグローバル化が進む中で、単一の大きなクレジットサイクルができあがりつつあるようです。

 

クレジットサイクルが現在どのような段階になるのかを明確に表すのは難しく、特に指標があるわけではありません。

しかし例えば、中国のクレジットサイクルは金融緩和を始めた段階だから修復期であるとか、カナダのクレジットサイクルは米国のクレジットサイクルより一年程度先を行っているな、といったことは各経済指標から大まかに判断でき、そういった感覚を持つことは、長期投資をする上で非常に役に立ちます。

 

 

| ファンダメンタルズ分析 | 20:30 | comments(0) | trackbacks(0) |

ファンダメンタルズ分析 6 - 1 「為替取引  概要」

ファンダメンタルズ分析 6- 1 「為替取引 概要」

 

 

為替取引の基本は、

「『割安』な通貨を『買い』、『割高』な通貨を『売る』」

ことです。

しかし多くの通貨は「割高」でも「割安」でもないというのが実情です。そのため、出来るだけ多くの通貨を分析することが重要になります。そうして分析した通貨を順に並べ、より「割安」な通貨を「買い」、より「割高」な通貨を「売る」ことがまず基本になります。

 

イメージとしては、

 

・「一番割安な通貨」/「一番割高な通貨」 のロングポジション

・「二番目に割安な通貨」/「二番目に割高な通貨」 のロングポジション

 

のようなポートフォリオを組む感じです。

 

 

実際にポジションを取る際には、実質実効レートで3割以上の値幅を狙いたいものです。為替の動きで3割というのは理由もなしには動かない値幅であり、その理由を見つけ取引することが重要になります。しかし、3割の値幅を得るのはなかなか難しく、実際にはその中で1割程度の値幅がとれるようになれば、良い感じかなと思います。

 

 

 

・タイミングと狙い目

通貨が大きく動く際にはいくつかのパターンが考えられます。

ここでは概要だけを説明し、次節からそれぞれの項目を詳しく説明します。

 

.侫.鵐瀬瓮鵐織襯困悪い通貨が単独で下落する。

これは、何かの理由である通貨のファンダメンタルズが極端に悪くなった場合に起こる値動きです。

頻度としては少ないのですが、起こった場合に下落幅が大きくなるのが特徴です。

 

▲侫.鵐瀬瓮鵐織襯困変化している局面での金融政策の変更

いわゆる中央銀行の金融政策の変更に伴う為替の変動です。実質金利や通貨供給量の変化をもたらすため、直接的に通貨のファンダメンタルズ影響を与えます。

 

E蟲ゞ擇離櫂献轡腑鹹汗

 Ν△鮓‘い靴董⇔匹ぞ魴錣猟眠澆ない場合の選択肢です。投資家のポジションが偏っていることは、一番シンプルなファンダメンタルズなのかもしれません。

 

| ファンダメンタルズ分析 | 18:50 | comments(0) | trackbacks(0) |

ファンダメンタルズ分析 6-2 「ファンファメンタルズが悪い通貨の下落」

ファンダメンタルズ分析6−2

「ファンファメンタルズが悪い通貨の下落」

 

ファンダメンタルズ分析による為替投資において、もっとも積極的に狙っていきたいのが、「ファンダメンタルズが悪い通貨の下落」タイミングになります。

機会は限られますが、値幅が大きく経済指標に現れるため分かり易いことが特徴です。

 

ファンダメンタルズが悪いと言うことは、「『産業水準』が『生活水準』と比較して低い状態」ということです。この「産業水準」と「生活水準」との乖離が大きくなると、外貨の支払いが外国からの借入れや投資でまかなえなくなり、債務の返済額が増加する共に、通貨が下落していきます。中長期(数ヶ月〜数年)で徐々に値を切り下げていき、何らかのきっかけで急下落することもあります。

 

1995年〜のアジア通貨危機や2018年8月のトルコリラはこの典型例となり、また、他国通貨にペッグしている通貨がペッグを止めざるを得なくなり、急下落するものファンダメンタルズの悪化が原因です。

その他、リーマンショック(2008年10月)や、バーナンキショック(2013年5月)で新興国通貨が大きく下落したのも、下落のきっかけは異なりますが、下落幅が大きくなる理由は、ファンダメンタルズが極端に悪かったことが考えられます。

 

ちなみにファンダメンタルズが良い通貨では、急激な変動は稀になります。狙いやすいのは圧倒的にファンダメンタルズが悪い通貨の下落のほうです。

 

 

 

☆経済指標と相場の確認

「ファンファメンタルズが悪い通貨の下落」を狙うに場合に注目する経済指標は、

 

・経常収支 GDP比 −3% 注意

           −5% 危険

(米国・英国は貿易に使用される通貨の割合が高いため、数%程度の経常赤字は許容される)

・対外債務 GDP比  50%以上(新興国)

            80%以上(高格付け先進国)

・インフレ率 10%

(本質的なファンダメンタルズの悪さを示しているわけではないのですが、インフレ率が高い方が債務の借換が大変という意味)

 

と比較的シンプルです。さらに金融市場環境として、

 

・金融市場全体がリスクオフ

・市場参加者が少ない

 

等が上げられます。

 

経常収支幅が大きく悪化している国の通貨を定点観測し、債務の返済がどうなっているのかに注目する見つけやすいと思います。

 

 

 

☆具体例

2018年8月のトルコリラの急落を具体例としてみていきます。

 

2017年末のトルコの経済指標を確認。

 

経常赤字 対GDP比      - 5.5%

対外債務 対GDP比     約 53%

インフレ率         10.3%

 

失業率                            10.4%

 

全体的にかなり悪い数字となります。

この2017年末の時点ですでにトルコリラの下落は続いているのですが、経常収支は悪化、対外債務は増加していました。つまり、「産業水準」の成長より、「生活水準(個人消費)」の伸びのほうが早かったということになります。これは、トルコ政府が内需の拡大により、経済を成長させようとした結果と推測されます。

 

金融市場環境の確認

・米国の金融政策の緊縮化(バランスシート縮小・政策金利の上昇)

・ECBの債権買い取り額の縮小

・その他各国の中央銀行が利上げ

 

2017年後半ごろから世界の中央銀行で緊縮的な金融政策が増加しました。そのため、投資資金をリスクの高い投資先から引き揚げる動きが増え、トルコなどの新興国から主要国へ資金が流れやすい環境となっていました。

 

そして運命の8月を迎えます。

 

・8月はバカンスシーズンで市場参加者が少ない。

・トルコリラ建て債券は日本人個人投資家に人気の金融商品ですが、日本もお盆前のため売買が低調。

・休日前金曜。

・トルコの銀行が月央から休みに入るため、決済用の米国ドル需要が増加した。(トルコリラ売り、米国ドル買い)

 

などトルコリラが売られやすい環境が重なり、8月10日(日本時間)午後に大幅な下落となりました。

ここまでファンダメンタルズが悪化している場合は、金融政策が(為替の上昇には)全く効かないというのが特徴でしょう。中央銀行が政策金利を実質的に引き上げているにもかかわらず、通貨の下落が止められないというのは一つの目安になると思います。

 

 

 

 

| ファンダメンタルズ分析 | 18:40 | comments(0) | trackbacks(0) |

ファンダメンタルズ分析7-1 「実質実効為替レートの回帰性」

ファンダメンタルズ分析7-1 「実質実効為替レートの回帰性」

 

実質実効為替レートについての説明は → こちら

 

 

為替の本質的な強さを示す指標である実質実効為替レートには、回帰性という特性があります。つまり「一方に動いた場合に、元に戻ろうとする力が働く」と言うことです。指数を安定化させるオートスタビライザー(自動安定化装置)の働きをします。

 

しかし、実質実効為替レートの回帰性は、理論上平均回帰しない(元に戻ろうとするのだけれど、平均値に近づくわけではない)という大変厄介な性質になっていて、そのため取り扱いには非常に神経を使う必要があります。

 

 

実質実効為替レートは、次のような要因で動きます。

 

「1 産業水準と生活水準の変化」

「2 投機需給の変化」

 

まず、「2 投機需給の変化」とは、例えば投資家がその国の金融資産(株式・債券・為替)を買ったり売ったりすることです。これは買われる時期と、売られる時期があるため、周期的に変化します。これが実質実効為替レートの回帰性の要因になるものです。この働きだけを考えますと、(金融資産の売り買いは合計すると0になるため)実質実効為替レートは平均回帰をすることになります。

それでは、なぜ実質実効為替レートが平均回帰をしないかといいますと、それは「1 産業水準と生活水準の変化」が実質実効レートに影響を与えるためです。

「1 産業水準と生活水準の変化」は、その国の貿易の強さがどう変わったかを示しているのですが、こちらは回帰性を持ちません。産業が進化し、貿易力が強化された場合は、そのまま実質実効為替レートは上昇することになり、産業が弱体化した場合は、そのまま実質実効為替レートは下落することになります。

よって、為替の変化が「2 投機需給の変化」によってなされた場合は、回帰性が働くため、為替は元に戻ろうとするのですが、為替の変化が「1 産業水準と生活水準の変化」によってなされた場合は、回帰性は働かず、通貨は元に戻らないということになるのです。

 

 

| ファンダメンタルズ分析 | 17:50 | comments(0) | trackbacks(0) |
■ LATEST ENTRIES
■ CATEGORIES
■ ARCHIVES
■ SEARCH
■ LINKS
■ PROFILE